『ダンダダン』“最強ババア”鬼頭ナキが強烈すぎる サイエンスSARUならではの演出が光る

『ダンダダン』“最強ババア”鬼頭ナキが強烈

 そして、何より今回の肝は磯辺万沙子の声だ。鬼頭家に到着したモモに対し、「やっと供物がそろったな。それじゃ祭りを始めようか」と語るナキ。この一言の低さとドスの効き方が、本当に怖い。磯辺といえば洋画吹き替えの重鎮として知られ、ドラマ『ER緊急救命室』などでの低音の重みは有名だが、舞台で鍛えたあの響きの強さを、ここで改めて思い知らされた人も多いはずだ。

TVアニメ『ダンダダン』第2期ティザーPV|2025年7月から全国同時放送予定

 しかも怖いだけではなく、どこかに“笑ってしまうヤバさ”が同居しているのが磯辺の巧さで、ただ怖いだけの悪役では終わらせない。冷たい低音の奥にちらつく、何をするかわからない人間の怖さと村の因習の不気味さ。その全部を声に乗せられる人が、他にいるだろうか。あのセリフひとつで、「この村、絶対普通じゃない」という視聴者の感覚を完全に決定づけてしまったのは間違いない。まさに最強ババアだ。

 磯辺は、日本大学芸術学部演劇学科演技コースを卒業後、劇団昴に在籍し、舞台、テレビドラマ、洋画吹き替えなど幅広い分野で活躍してきたベテラン声優だ。洋画吹き替えではCCH・パウンダーやマーゴ・マーティンデイルの持ち役を務めるなど、その表現力には定評がある。さらにアニメでも『モンスターズ・インク』のロズ役や『バグズ・ライフ』の女王アリ役、『聖女の魔力は万能です』のマリー役、『この音とまれ!』の仁科静音役、『キングダム』のバア役など、多彩なキャラクターを演じ分けてきた。長年のキャリアで培われたこの幅と奥行きが、ナキの威圧感や鬼頭家全体が持つ異様さを、原作や映像以上に強く印象づけているのは間違いない。

 『ダンダダン』は、ホラーとギャグと青春が背中合わせで絡み合うからこそ面白い。ナキの声が恐ろしければ恐ろしいほど、ジジやモモ、オカルンのささやかな“日常の温度”が際立つ。背景の色が移ろうだけでなく、声が空気の温度を一変させる。その“声の温度差”が物語の不気味さと、人間らしさの両方を支えていた回だった。

 次回はいよいよ“邪視”が本格的に動き出していく。ジジが抱える影、鬼頭家の秘密、そしてモモとオカルンの距離感が村の空気と一緒にじわじわ滲み出してくる。この新章を支配する鬼頭ナキという存在が、磯辺の声でどこまで不気味さを増幅させていくのかも見ものだ。まだまだ底の知れないナキの恐ろしさも含めて、今期はどこまで私たちを楽しませてくれるのか。この先の物語が、楽しみでならない。

■放送・配信情報
TVアニメ『ダンダダン』
第1期:各配信サイトにて全話順次配信中
第2期:MBS/TBS系スーパーアニメイズム TURBO枠にて、毎週木曜0:26〜全国同時放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)、磯辺万沙子(鬼頭ナキ)、田村睦心(邪視)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
第1期オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
第1期エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan

 

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