『恋は闇』想像をはるかに上回る傑作になる予感 志尊淳のペースに呑み込まれる岸井ゆきの

『恋は闇』は想像をはるかに上回る傑作に

 志尊淳と岸井ゆきのがダブル主演を務め、4月16日にスタートした日本テレビ系水曜ドラマ『恋は闇』。“恋愛ミステリー”と銘打たれているのを見ると、恋愛要素と他ジャンルの要素を掛け合わせたという点で、同局の前クール作品にあったどちらも中途半端な肩透かし感を不安視していたのだが、そんなことはまったくもって杞憂だったようだ。もちろんまだ第1話なので、その全体像は判然としない。けれどもこれは、想像をはるかに上回る傑作になる予感がひしひしとただよっている。

 テレビ局の情報番組でディレクターとして働く、報道記者志望の筒井万琴(岸井ゆきの
)。4月4日の夜、毎月ゾロ目の日に女性が殺害される連続殺人事件の4件目が発生し、現場に駆けつけた万琴は、そこで週刊誌のフリーライターをしている設楽浩暉(志尊淳)と出会う。彼は一連の事件を“ホルス殺人事件”と名付け、警察が発表していない情報をスクープしたやり手の記者だ。過去の経験から、遺族に寄り添いたいと考えている万琴は、情報を得るためなら手段を選ばない設楽のやり方に抵抗を示しながらも、次第に彼のペースに呑み込まれていく。

 冒頭から設楽が何らかの罪を犯しているとにおわせる描写にはじまり、中盤では意味深にアップショットで映しだされる彼のスニーカー(終盤でそれが、現場に残された足跡と一致する)。そして公園で万琴と向かい合うシーンでは、彼女の頭越しにその表情の変化がとらえられ、二面性が表現される。万琴の友人で事件を追う刑事の小峰正聖(白州迅)も訝しんでいたように、もっぱらこの設楽という男が何者で、一連の事件の犯人か否かということが物語の重要な争点となるわけだ。

 この“ホルス殺人事件”は、劇中の台詞を借りれば「世の中が注目すればするほど犯人の欲望が満たされていく」、いわゆる“劇場型犯罪”。それを踏まえれば、取材によって事件の被害者の過去を知り、それを報じるべきか悩む万琴に浩暉が言う、「(メディアは)大衆を煽って盛り上げるんだ。興味を持続させて世間が忘れないようにする。忘れられたら事件は終わる」という言葉は、どちらの意味にも取れる。報道に携わるものとしての矜持か、あるいは犯行を繰り返す者の承認欲求か。

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