インド映画に痛快な“教師もの”誕生! 『バーラ先生の特別授業』の型破りな指導は必見
「アクションはアクション映画だけの専売特許じゃないぜ!」……そんな『スナック バス江』(著:フォビドゥン澁川/集英社)の名セリフを彷彿させる、社会問題に切り込む教育系ヒューマン勧善懲悪ドラマが登場した。『バーラ先生の特別授業』(2022年)である。
1990年代、インドでは教育格差が悪化の一途を辿っていた。学費の高い私立学校でしか良質な教育を受けられず、庶民が通う公立学校は打ち捨てられ、ロクに授業も行われない始末。さらに、この私立に生徒が集まる仕組みを作り上げた教育協会は、汚れたビッグマネーを稼いでいた。そんなとき、とある事情から予備校で働くバーラ(ダヌシュ)は、田舎の公立学校に教師として派遣される。案の定、学校は空き家同然だった。生徒たちは家計を助けるために、勉強そっちのけで労働三昧。フラフラと遊んでばかりの者もいる。保護者たちも「勉強なんかしなくていい」と堂々と語り……。こりゃいかんと思ったバーラ先生は、生徒たちの未来のために立ち上がる!
学園荒廃した学校に、型破りな熱血教師がやってきた! これだけで伝わる魅力があるだろう。古くは中村雅俊の学園もの、あるいは『スクール・ウォーズ』(TBS系)、『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)などなど、今なおテレビドラマの鉄板ネタだ。『バーラ先生の特別授業』は、このジャンルが好きな御方のツボを全て打ち抜くだろう。
ではでは、このジャンルのツボとは何だろうか? それは主人公らを襲う実際の社会でも多く存在する「問題」に対して、スッキリ爽快な解決策、もっと言えば “カマし”が炸裂する瞬間だ。先に挙げた『GTO』で、家族との心の壁に悩む生徒のために、生徒の家に行って、文字通り壁をハンマーで破壊して、「“冷たい壁”ってのはよォ……ブチ壊してやったぜ?」と語るシーンなどは、まさにこの“カマし”の理想形である。
本作でもいろいろな問題に対して、バーラ先生からの「なるほど!」な“カマし”が連発する。コツコツとしたお願いから、人々を集めての大演説、そしてカースト制度で揉める生徒たちに対する膝を叩きたくなること必至の解決策……。ある程度は展開が読める部分もあるかもしれないが、現実に存在する様々な問題を機転と工夫で乗り越えていくのは、やはり観ていて非常に痛快である。しかし、バーラ先生がすごいのは、単に頭の回転が早いだけではない。それが冒頭に述べた名セリフに繋がってくるのだが……実は、バーラ先生はメチャクチャ強いのだ。ここでいう強いとは、もちろん「暴」の意味である。