『Flow』空と海と大地を駆け抜ける猫たち “人類”不可視の映像体験が病みつきになる
『Flow』の主人公はなぜ猫なのか?
それにしてもなぜ「猫」が主人公として登場するのか。とりあえず猫がかろうじてなら「飛べる」し「泳げる」動物であるおかげで、複数の「世界」の体験が可能になっている。
中盤でヘビクイワシに襲われた猫は、突然空中にさらわれたかと思えば、乱暴にもそこから投げ落とされる。知っての通り「着地」に長けている猫は船の帆に引っかかりながらなんとか接地する。あるいは船上から水中に投げ出されることもしばしばあるが、「泳げなくはない」猫はなんとか再び船をよじ登ることができる(終盤、この動作に小慣れてさえくる)。
つまり基本的には船上に軸足を置く本作だが、時には猫が空中なり水中の世界を体験させてくれる。船の、テクノロジーの外部へと誘ってくれる。
私たちは(比較的身近な)猫のローアングル視点を通してなら、むしろ人外のパースペクティブを体験することができるのだ(もちろんそれは映像というテクノロジーが可能にした体験である)。
■公開情報
『Flow』
全国公開中
監督:ギンツ・ジルバロディス
配給:ファインフィルムズ
2024/ラトビア、フランス、ベルギー/カラー/85分/原題:Flow/G
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
公式サイト:flow-movie.com