『逃げ恥』『リモラブ』などドラマが描いてきた“コロナ禍” 『おむすび』はどう向き合う?

『おむすび』はコロナ禍をどう描く?

 NHK連続テレビ小説『おむすび』の作中で、ついにコロナ禍となる2020年を迎えた。病院で働く結(橋本環奈)、アパレルショップの社長として働く歩(仲里依紗)、理容室で働く聖人(北村有起哉)、愛子(麻生久美子)、翔也(佐野勇斗)の目まぐるしい生活の変化が、描かれていくことになるだろう。

 新型コロナウイルスが流行り始めた2020年から、コロナ禍の生活を描くドラマは数多く制作されてきた。まず先陣を切ったのは、2020年秋クールの『#リモラブ〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)。産業医の主人公・大桜美々(波瑠)が新型コロナウイルスをきっかけに始めたオンラインゲーム内のチャットで出会った檸檬さん(正体は同じ会社で働く青林風一(松下洸平))とのやり取りのなかで、不器用な恋をする物語だ。

 マスクをしながらの生活、コロナ禍の一般企業の業務スタイルの変化、それに伴う産業医の業務についてもリアルに描かれていた。コロナ禍という状況を逆手にとり、人との交流が減ったことによる孤独感やネットを通じて始まった恋愛が成就するまでの過程、コミュニケーションの難しさを丹念に描き出した。会いたい人に会えない、顔が見えない、自粛しなければならない、でもこの時間はもう戻ってこない。そういったコロナ禍ならではの葛藤がエピソードの端々から伝わってくるドラマだった。これは、脚本家含めた制作陣も、ドラマを観ている視聴者も、コロナ禍によって行動が制限されたことで心のどこかに解消されない不満があったからこそ、心底共感できる内容だったと言えるだろう。まさに、あの時にしか作れなかったドラマだ。

 2021年の正月にSPドラマとしてカムバックした『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系)では、物語の後半からコロナ禍に突入していく。本作は、森山みくり(新垣結衣)の妊娠発覚から出産までの過程が描かれるが、出産直後コロナが流行り始める。平匡(星野源)は育休を返上して出社することを余儀なくされ、みくりは子供を連れて千葉の実家に帰ることに。今この瞬間しかできない2人で取り組む新生児の育児を諦めなければならない様子には、胸が締め付けられた。土屋百合(石田ゆり子)が務める化粧品会社も、沼田(古田新太)の行きつけのバーもコロナ禍のあおりを受けて、経営が悪化する様子が描かれた。SPドラマは、海野つなみによる同名コミックの第10巻と第11巻を原作としているが、コロナ禍の描写はドラマオリジナル。『逃げ恥』に馴染む温度感で差し込まれたコロナ描写とそこから滲む社会性からは、脚本を担当している野木亜紀子の作家性が感じられた。

 『おむすび』と同じく、大規模パンデミックの真っ只中の病院が描かれたのは、2024年放送の『新宿野戦病院』(フジテレビ系)。本作の場合、コロナではなくルミナであったが、ルミナウイルス蔓延時期の生活の様子は、コロナ禍そのものだった。マスクをしたままの生活、保護服を着た医療従事者たち、院内のゾーニング、病院への補助金とその裏側などが描かれていた。一方で、本作がより濃く描いたのは、ウイルスをきっかけとした差別や終焉後の社会の動き。コロナではなく、コロナ後に流行した別のウイルスを描いたことで、ウイルスに支配された社会で繰り返される人間の愚かさを皮肉る意図が感じられる作品だった。

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