『マクロス』に求められる“歌姫”の資質とは? 新オーディションと過去作の歴史を分析
新しい『マクロス』が始まった。まずは歌姫からだ。3月2日にABEMAで生放送された「マクロス×サンライズ 新作大発表スペシャル」で、サンライズ(バンダイナムコフィルムワークス)が手がける「マクロス」シリーズ最新アニメーションの歌姫を募集する「マクロス×サンライズ 『新マクロス』超時空歌姫オーディション2025」の開催が発表された。課題曲の「アイ to アイ」もお披露目され、『マクロスΔ』で歌姫オーディションから勝ち上がってフレイア・ヴィオン役を射止めた鈴木みのりが歌った動画も公開。これに挑戦した人から歌姫が選ばれ、次の「マクロス」の行方を左右する。
1982年放送の『超時空要塞マクロス』から始まった『マクロス』シリーズは、常に歌姫が登場してその歌声で襲ってくる敵に立ち向かい、人類の未来を切り開いてきた。『超時空要塞マクロス』ではリン・ミンメイが伝説の歌姫としてその名を刻み、1994年の『マクロスプラス』では今の初音ミクに通じるヴァーチャロイド・シンガーのシャロン・アップルが登場。同じ1994年の『マクロス7』では男性の熱気バサラがバンド「Fire Bomber」のメインボーカルを張ると同時に、ギター担当でもあるミレーヌ・フレア・ジーナスもボーカルとしてしっかり活躍した。
そして、2008年の『マクロスF』で改めてマクロス=歌姫の構図が柱として確立された。何しろ2本柱だ。銀河の妖精としてその名を宇宙にとどろかせるシェリル・ノームと、新人としてデビューしたランカ・リーが、それぞれに影響し合いながらとてつもない歌声を響かせ、人々を救った。2016年の『マクロスΔ』では、5人の女性がメンバーとなった音楽ユニットが登場し、それぞれに魅力的な歌声を聴かせつつ襲ってくる敵と戦った。
この『マクロスF』と『マクロスΔ』で実施されたのが歌姫のオーディションだ。『マクロスF』では2007年に実施の「Victor Vocal & Voice Audition」で、約5000通の応募から中島愛が選ばれランカ役で声優デビューを飾り、数々の楽曲も出してアニメの中でも現実でもスターとなっていった。『マクロスΔ』では2014年に『マクロスΔ(仮)』歌姫オーディションが実施されて鈴木みのりが約8000人の応募から合格。フレイアを演じ戦術音楽ユニット「ワルキューレ」のメンバーとなってアニメの中で歌声を披露し、リアルでも数々のステージをこなして作品を盛り上げた。
新たな開催が発表となった「マクロス×サンライズ 『新マクロス』超時空歌姫オーディション2025」は、これらに続いて次の『マクロス』シリーズの重要な役割を担う歌姫を見つけ出そうとするものだ。応募資格は日本国内在住の13歳~22歳の女性(2025年4月1日時点の満年齢)で、方法は課題曲「アイ to アイ」を歌った動画をYouTubeにアップするというもの。書類とともに審査されて6月下旬にオンラインでの2次審査、7月下旬に対面での最終審査が行われて、晴れて最新作の歌姫が決定する。
「マクロス」に求められる歌姫の資質
ここで気になるのが、どのような歌姫が求められているのかといったところだ。『マクロスF』にはランカより先にスターとなったシェリルという歌姫がいて、圧倒的な歌唱力で人々を虜にしていた。アニメで声を演じたのは遠藤綾だが歌唱はMay'nが担当。パワフルなポップスもシックなバラードも自在にこなす圧倒的な歌唱力を聴かせてくれた。ランカはそんなシェリルに追いつこうとしてあがき、持ち前の明るさで成長していくフレッシュな新人ぶりを見せていた。
『マクロスΔ』でも「ワルキューレ」はカナメ・バッカニア役の安野希世乃、マキナ・中島役の西田望見、レイナ・プラウラー役の東山奈央に美雲・ギンヌメールで歌だけを担当したJUNNAといった、シンガーとしても活躍する声優と天才的な歌唱力を持つ少女シンガーによって固められていた。フレイアはそこに新たに加わり、苦労しながらも「飛べば飛べる」といった前向きな気持ちで挑み続け、ユニットに溶け込んでいった。
どちらかといえば荒削りの原石なり泥のついた野菜が磨かれ洗われながら成長していくという役回りを、『マクロスF』や『マクロスΔ』の歌姫オーディションで選ばれた2人は演じていた。そうした存在がそれぞれのストーリーの中でいっしょになって成長していく気持ちをもたらし、観る人を惹きつけつつラストまでにどれだけのものを観せてくれるようになるのかといった期待を誘った。