『ジークアクス』はガンダム初心者こそ観るべき一作 黒沢ともよの“圧倒的表現力”を体感
本作を観て筆者が特に感銘を受けたのは、主人公アマテ・ユズリハを演じる黒沢ともよの圧巻の演技だ。彼女が登場するのは後半パートになるが、ここからは初心者でも問題なく理解できるだろう。
『響け!ユーフォニアム』や『スキップとローファー』、『劇場版モノノ怪 唐傘』など、近年あらゆる名作で輝きを放つ黒沢の表現力には脱帽する。特に、戦闘中にアマテが見せる死への恐れや覚悟、そして怒りを滲ませる声の変化には目を奪われた。戦う決意を固めるアマテの一言一言に、観ているこちらの心も揺さぶられる。
そして、それが最高潮に達するのが、クライマックスのガンダム搭乗シーン。ガンダムに乗って叫ぶ場面の臨場感は鳥肌もので、劇場全体がその緊張感に飲み込まれるほどの迫力だった。そんな“ガンダムに乗った”黒沢の声を聞くだけでも、本作を観る価値は十分すぎるくらいにある。
ちなみに、普段は女性向けアニメを好む筆者にとって、土屋神葉が演じるシュウジ・イトウの柔らかで落ち着いた声も大きな魅力だった(彼の距離感の近さにアマテが照れるシーンも非常に良い)。シュウジの口癖「ガンダムが言っている」も、あの声で語られると妙な説得力があるから不思議だ。
総じて、本作は初心者でも十分楽しめる作品だ。確かに過去作の知識があれば理解が深まる部分はあるが、ストーリーはシンプルで、キャラクターの心情がしっかり描かれているため、初見でも問題なく入り込める。何より、黒沢ともよの熱演が作品全体の魅力を引き上げ、観客の感情を揺さぶる要素となっていた。
シリーズ未経験者にとって、この劇場版はガンダムの世界へ飛び込む絶好の機会かもしれない。この物語が何を描き、どこへ向かうのか。「#ジークアクス」の波に乗りながら、その先を確かめよう。