ストリップクラブの長回しはすべてアドリブ 『ANORA アノーラ』主演女優が語る特別映像

『ANORA アノーラ』撮影裏に迫る特別映像

 2月28日に日本公開される映画『ANORAアノーラ』の特別映像が公開された。

 第77回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、第97回アカデミー賞では作品賞をはじめ6部門にノミネートされている本作は、『タンジェリン』『フロリダ・プロジェクト真夏の魔法』『レッド・ロケット』のショーン・ベイカー監督最新作。ニューヨークを舞台に、ロシア系アメリカ人ストリップダンサーのジェットコースターのようなロマンスと騒動をユーモラスかつ真摯に描いていく。

 主人公のアノーラ、通称アニーを演じたのは、クエンティン・タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演したマイキー・マディソン。アノーラに夢中になるお調子者のロシア新興財閥の息子イヴァンをマーク・エイデルシュテインが演じた。そのほか、『コンパートメントNo.6』のユーリー・ボリソフ、『タンジェリン』にも出演したカレン・カラグリアンらがキャストに名を連ねた。

映画『ANORA アノーラ』マイキー・マディソンが冒頭シーンの裏側を明かすフィーチャレット映像

 公開されたのは、主演のマディソンが「一番好きなシーンかも!」という冒頭シーンの撮影について端的に語るフィーチャレット映像。

 ベイカーの映画作りのアプローチで特徴的な演出のひとつは“アドリブ”。シナリオを離れ、その場でキャストが台詞を考え出すことも多々あるという。『タンジェリン』や『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』などこれまでも素人や子どもにもアドリブを用い、様々な化学反応を生んできたことは記憶に新しい。本作でもアドリブは用いられており、冒頭シーンのストリップクラブのシーンは、脚本にはたった一行「アニーはクラブにいて、客の方に歩み寄る」と書かれていたという。想像力を膨らませ、かつリアリティを持たせて絵にしていくのは、役者たちの仕事ということだ。

 「完全にライブで撮った。音楽が場内で鳴り響き、ダンサーたちが踊っていた。私は場内を歩きながら客をひっかけたり同僚とおしゃべりしたりしてみた」とマディソンが語るそのシーンは、10分間の長回しを何度も繰り返してテイクを重ねたという。日常生活からかけ離れた音量もステージも営業中そのままを再現したストリップクラブ で、進む方向や話しかける相手も決めないまま10分間ストリップダンサーを演じるのは至難の業。しかし、役を射止めてからの1年を準備に費やしていたマディソンは、ストリップダンサーの役には不可欠なポールダンスの練習はもちろん、体の使い方、官能的に見える姿勢、どういう身のこなし方をすればいいのか、ヒールでどう歩けばいいのかといった細かい点まで、コレオグラファーに付いて学んだそう。さらに実際にストリップクラブに通いつめ、業界のしきたりや暗黙のルールも叩き込んで撮影に臨んだため、アドリブを指示されても戸惑いはなかったそうだ。マディソンは、「めったにない撮り方だと思うし、貴重な経験だった」と冷静に振り返っている。

 なお、このシーンでは手持ちカメラは使っておらず、クラブの人混みの合間を縫いながらドリー(移動式撮影台)でマディソンを追うように撮影、レンズは焦点距離が固定されるが暗い場所でも撮影可能な1970年代のロシア製アナモルフィック・プライム・レンズを使用している。ベイカーはこれまでiPhoneや16ミリなど題材に合わせて柔軟に撮影スタイルを選択してきたが、本作で選んだのは35ミリ。1970年代のインディ映画作家の撮影方法を意識して、できるだけカメラを固定し撮影したという。また、色彩設計でクラブの色を赤に決め、ドリーで撮影する際に赤が鏡や照明で反射するよう、クラブ全体に赤いティンセルを飾ったそうだ。

■公開情報
『ANORAアノーラ』
2月28日(金)新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ、カレン・カラグリアン、ヴァチェ・トヴマシアン
監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー
製作:ショーン・ベイカー、アレックス・ココ、サマンサ・クァン
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
2024年/アメリカ/カラー/シネスコ/5.1ch/138分/英語・ロシア語
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures
公式サイト:anora.jp
公式X(旧Twitter):@anora_jp

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