『全領域異常解決室』は令和を代表するミステリードラマに ラストの描写に続編の可能性?

人間のあり方をも問うた『全領域異常解決室』

 そこで待っていたのは直毘吉道(柿澤勇人)。ヒルコによって操られているかに思われた直毘だったが、その正体は飛鳥時代の呪術者・役小角、つまりヒルコだったのだ。直毘の怪しさは回を重ねるごとに深まっていったが、まさか興玉が仕掛けた犬神の毛が役に立とうとは。かつては万物に感謝しながら生きていた人間が科学の発展によって傲慢さを増していったという直毘の主張は一理あるのかもしれない。だが、それが人間を見下していいことにはならない。あれだけ人間を信頼していなかった興玉が「何度裏切られても人間たちを信じ続けるしかないんです」と語るシーンには目頭が熱くなった。

 そして雨野の過去も明かされる。ヒルコによって事戸渡しをしたかに思われていたが、雨野は興玉を守るために自ら事戸を渡すことに決めたのだった。事の経緯を知った興玉の目には涙が浮かぶ。雨野と興玉は私たちが思っている以上に強い絆で結ばれていたのだ。

 クライマックスでは荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)が救援にやってくるという胸アツな展開となったが、直毘に操られた興玉を救ったのは荒波ではなく雨野だった。すでに事戸を渡して人間になっている雨野には呼び出しの能力はないはず。だが、興玉には雨野の鈴の音がしっかり届いていた。2人の間の時代を超えたプラトニックな愛情は、私たちに深い余韻を残してくれていた。

 張り巡らされた秀逸な伏線と練られたストーリーだけではなく、人間のあり方をも問い直してくれた『全領域異常解決室』。令和を代表するミステリードラマとして、私たちの脳裏に刻まれることだろう。気になったのはラストの二宮の行動。もしかすると続編の可能性もあるのだろうか。最終話の余韻に浸りつつ、続編にも期待を寄せたい。

■配信情報
『全領域異常解決室』
TVer、FODにて配信中
出演:藤原竜也、広瀬アリス、柿澤勇人、福本莉子、小宮璃央、成海璃子、迫田孝也、ユースケ・サンタマリア、小日向文世
脚本:黒岩勉
プロデュース:成河広明、大野公紀
演出:石川淳一
音楽:小西遼
オープニングテーマ:清水美依紗「TipTap」(ユニバーサル ミュージック)
エンディングテーマ:TOMOO「エンドレス」(IRORI Records/PONY CANYON inc.)
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
©フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/zenketsu/
公式X(旧Twitter):https://x.com/zenketsu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/zenketsu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@zenketsu_fujitv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる