実写版の前にアニメ『はたらく細胞』をおさらい 花澤香菜、長縄まりあ、石田彰らの名演

実写版の前に観たいアニメ『はたらく細胞』

「がん細胞」石田彰の絶望感

 そして『はたらく細胞』の魅力としては、バトル展開も大きな見どころだ。細胞たちは日夜、さまざまな“敵”との戦いを繰り広げている。とくに宿命的な強敵と言えるのが、第1期第7話に登場した大ボス・がん細胞だ。一般細胞を装っていたが突如豹変し、ゾンビのような見た目になると、“増殖”というチートじみた能力によって人体を蝕んでいった。

 その戦闘力は圧倒的で、白血球(好中球)とキラーT細胞、NK細胞が3人がかりで立ち向かっても軽々と一蹴されてしまうほど。声優・石田彰による淡々としたしゃべり方も絶望感がある。

 さらに第2期にあたる『はたらく細胞!!』の終盤では、そんな最強の敵がふたたび登場。さらに強大になったがん細胞が、世界(人体)を終わらせるべく白血球(好中球)たちの前に立ちはだかるのだった。作中ではまるでバトルファンタジーのような迫力で、がん細胞と免疫細胞たちの最終決戦が描き出されていく。

『はたらく細胞BLACK』で描かれた“労働環境の違い”

 とはいえ、あくまでこうした物語で描かれているのは、ある程度健康的な肉体での出来事。肉体の持ち主が不健康だった場合には、細胞たちはより過酷な“ブラック企業”のような環境で働かされることになる。その様子を取り上げたのが、スピンオフとして2021年に放送された『はたらく細胞BLACK』だった。

 同作の舞台となるのは、疲労や睡眠不足、暴飲暴食などによってボロボロになった人体だ。主人公の赤血球(AA2153)はホワイトな職場紹介映像を見せられるも、現実には過酷きわまりない環境に放り込まれることに。そこはもはや戦場のような有様で、血小板が刺々しくなり、マクロファージですら疲れきった笑顔を浮かべる始末だった。そしてアルコールによる脂肪肝や胃潰瘍、尿路結石や淋菌の侵入など、あらゆる体調不良によって細胞たちが苦しめられていく。

 その一方、夜の繫華街のような肝臓で、アダルトな格好をした肝細胞たちに赤血球が癒される場面などもあり、いろいろな意味で本編とは一味違った光景を楽しませてくれた。

 なお、今回公開される実写映画版では、本編に加えて『はたらく細胞BLACK』の内容も反映されているとのこと。芦田愛菜演じる健康な高校生・漆崎日胡と、阿部サダヲ演じる不健康な父親・茂という2人の体内をベースに物語が展開していくという構図だ。こうした構成の工夫によって、細胞たちの“労働環境の違い”がより一層浮き彫りになりそうだ。

 実写では原作やアニメとは違った世界観が作り上げられるはずなので、まったく新たな形の『はたらく細胞』が見られるかもしれない。永野芽郁や佐藤健など豪華キャストの活躍にも期待しつつ、公開開始を楽しみに待ちたい。

■配信情報
『はたらく細胞』
各種配信サービスにて配信中
声の出演:花澤香菜、前野智昭、小野大輔、井上喜久子、長縄まりあ、石見舞菜香、甲斐田裕子、中村悠一、千葉翔也、川澄綾子、行成とあ、岡本信彦、櫻井孝宏、早見沙織、小林裕介、吉田有里、高橋李依、藤原夏海、久保ユリカ、石田彰ほか
原作:清水茜(講談社『月刊少年シリウス』所載)
監督:小倉宏文
シリーズ構成・脚本:柿原優子
キャラクターデザイン:吉田隆彦
細菌キャラクターデザイン・プロップデザイン:三室健太
サブキャラクターデザイン:玉置敬子
総作画監督:吉田隆彦、玉置敬子、北尾勝
美術監督:細井友保(スタジオちゅーりっぷ)
美術設定:曽野由大
色彩設計:水野愛子
撮影監督:大島由貴
3DCG監督:石井規仁
編集:廣瀬清志(エディッツ)
音響監督:明田川仁
音響制作:マジックカプセル
音楽:末廣健一郎・MAYUKO
アニメーションプロデューサー:若松剛
アニメーション制作:david production
製作:アニプレックス、講談社、david production
ナレーション:能登麻美子
©清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction
公式サイト:http://hataraku-saibou.com
公式X(旧Twitter):@hataraku_saibou

『はたらく細胞BLACK』
各種配信サービスにて配信中
声の出演:榎木淳弥、KENN、日笠陽子、Lynn、内山夕実、鳴海崇志、久保ユリカ、椎名へきる、ブリドカット セーラ 恵美、平川大輔ほか
原作:原田重光・初嘉屋一生・清水茜(講談社『モーニング』所載)
監督:山本秀世
シリーズ構成・脚本:森ハヤシ
キャラクターデザイン:安彦英二
メカニックデザイン:氏家嘉宏
アクションエフェクト作画監督:神谷智大
美術監督:佐藤正浩、塚原千晶
美術監督補佐:大田麻友香
色彩設計:岡亮子
3DCGIディレクター:原一晃(旭プロダクション)
撮影監督:高津純平
撮影監督補佐:高村真実
編集:長谷川舞
音響監督:田中亮
音響効果:北方将実
音響制作:スタジオマウス
音楽:菅野祐悟
音楽制作:アニプレックス
アニメーション制作:ライデンフィルム
製作:アニプレックス・講談社・NetEase Games・TOKYO MX
ナレーション:津田健次郎
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT
公式サイト:saibou-black.com
公式X(旧Twitter):@cellsatworkbla1

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