『おむすび』はなぜ震災を真正面から描いたのか 制作統括&演出が大切にした“時間と心”

『おむすび』はなぜ震災を真正面から描いたのか

 さらに松木は「被災された直後から、避難所に集まったみなさんの中には『自分たちの力でどうにかするんだ』という思いが強くあったそうなんです。震災4日目、5日目にして、すでに名簿を作ったり、部屋を土禁にしてダンボールで区分けをしたり、自主的にルールを作って、支援が来る前に自分たちで動いていた。そのエピソードにも感銘を受けたので、ドラマにも取り入れています」と続けた。

 印象的だったのは、地震発生当日の夜、配給のおむすびを結が「冷たい」という場面。松木は「地震当日は水すら一口も飲んでいない、翌日にもバナナ1本だけだった、といったお話も聞きました。おむすびは、あの個数が来ただけでも良いほうかもしれず、『うちは来なかったよ』と思う被災者の方もたくさんいらっしゃると思います。ですから、あのシーンでは子どもやお年寄りだけがなんとか食べられた、といったギリギリの表現にしたいと思っていました」と胸中を吐露。

 同場面は「取材中に出会ったエピソードというよりは、『子どもの視点からこの地震を見たときにどうだろう。結の中にどのように刻まれるだろう』という視点で、脚本の根本ノンジさんが表現したかったもの」で、「この経験が結の心の中に残っていく。そして栄養を学ぶ過程、それから栄養士になった後にも、彼女の決断の起点になっていきます」と、物語の根幹となることを明かした。

 地震による被害の大きさ、心の傷、その一方で生まれた人々の思いやりや強さが描かれた第5週。震災を経験した結が今後どのような道を辿るのか、注目していきたい。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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