『放課後カルテ』松下洸平が教える“本当の優しさ” 母親の複雑な心情を表現したソニンの涙
その後、今度は姿を消した啓の捜索に奔走することになった牧野。しかし母・環は「啓ならすぐに帰ってきますよ」と、どこか冷ややかな態度を見せる。これまで病気と懸命に闘う弟・直明の心を支え、明るい笑顔で励まし続けてきた啓。小学6年生とは思えない深い思いやりの心に誰もが心を打たれる一方で、母である環は異なる形の愛情を胸に秘めていたのだった。
「体だけじゃない。心だって悪気のない人に傷つけられるの。苦しいのは直明なのよ」
環のその言葉には、我が子を世界中の辛さから守り抜こうとする母親としての揺るぎない決意が込められていた。環もまた、啓と同じく、いつの日か直明が何の心配もなく普通の日常を過ごせる日が来ることを、誰よりも切実に願っている。友達と楽しい思い出を作らせてあげたい。外の世界で思いっきり遊ばせてあげたい。その切なる願いは、母親である環にとっても変わらないものだった。しかし、一時的に願いを叶えてあげることで、後に体調を崩し、苦しい思いをするのは直明本人なのだ。
大人が、そして特に家族が示すべき本当の優しさとは、時として厳しさを伴うものだ。それは、愛する人のために最善を尽くし、時には自分の感情を押し殺してでも、相手の未来を第一に考えて行動することなのかもしれない。息子を守りたいという強い思いと、その成長を見守る喜びの間で揺れ動く複雑な母親の心情を、ソニンの“涙”が見事に表現していたのではないだろうか。
環が見せる直明への深い愛情と、その愛ゆえの苦悩を牧野は見事に見抜いていた。「みんなでかくれんぼして遊んだんだ」と、目を輝かせながら無邪気に語る直明。その晴れやかな表情に、牧野は静かに、しかし確かな重みを持つ言葉を投げかける。「かくれんぼができるようになったのは、お前が今まで辛抱強く治療を続けてきたからなんだ」と。
そもそもの牧野というキャラクターが体現するように、本作の描く優しさは、時としてピリリと辛口で、受け手を一瞬たじろがせることもある。しかし、その言葉の裏には必ず、相手の成長を願い、その人の未来を見据えた深い愛情が込められている。それは決して、その場しのぎの慰めでも、表面的な同情でもない。目の前にいる人が本当の意味で強くなり、自分の足で立って歩いていけることを願う、純粋で力強い想い。そんな“本当の優しさ”の在り方を、そっと教えてくれるのが『放課後カルテ』なのだろう。
■放送情報
土ドラ9『放課後カルテ』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:松下洸平、森川葵、ホラン千秋、平岡祐太、高野洸、六角慎司
原作:日生マユ『放課後カルテ』(講談社『BE・LOVE』所載)
脚本:ひかわかよ
演出:鈴木勇馬ほか
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
協力プロデューサー:大平太
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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