『嘘解きレトリック』こだわり抜かれた昭和レトロな世界観 鈴鹿央士×松本穂香が事件を解決

 もし人の嘘が聞き分けられるようになったら? その異能は祝福か、それとも呪いか。10月期月9ドラマ枠にて放送が始まった『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)は、都戸利津の同名マンガを原作とする、昭和の雰囲気漂うレトロミステリーだ。鋭い観察眼と推理力を持つものの借金まみれの貧乏探偵・祝左右馬(鈴鹿央士)と、生まれながらに嘘を聞き分ける特殊能力を持つ浦部鹿乃子(松本穂香)が、難解な事件に挑み解決していくさまが描かれる。

 田舎の閉鎖的な村に住む浦部鹿乃子は、幼い頃から周囲の人々の嘘を見抜く力を持っていた。しかし、その異質な能力のせいで彼女は“バケモノ鹿乃子”とあだ名をつけられ、村人たちから疎まれる存在に。愛する母のフミ(若村麻由美)にこれ以上迷惑をかけまいと、鹿乃子は村を出ることを選ぶ。

 希望を胸に鹿乃子がたどり着いたのは、九十九夜町(つくもやちょう)。しかし、そこで行き交う人々もまた、様々な嘘を吐いている。仕事を探す彼女の目に留まったのは、「女給至急入用」の貼り紙。期待を胸にカフェー「ローズ」に足を踏み入れるが、女給のリリー(村川絵梨)に、働き手が決まったばかりだとにこやかに断られてしまう。そして悲しいことに、その言葉さえも嘘だと感じ取ってしまう鹿乃子。新天地での生活は、思いもよらぬ困難の連続となりそうだ。

 その頃、「祝探偵事務所」を営む祝左右馬は、親友で警官の端崎馨(味方良介)を巧みに説得し、稲荷神社の掃除に付き合わせていた。なぜ警官である自分が手伝わされているのかと不審がる端崎に、左右馬は「人の生死がかかっている」と大げさに答える。実は、経済的に逼迫していた左右馬にとって、この掃除は事務所の大家から家賃をまけてもらうための策だった。

 神社に到着した2人の耳に聞こえたのは、野犬のような唸り声と「おいてけ~」という女性の声。物音の正体を突き止めようと茂みに分け入ると、そこで目にしたのは予想外の光景だった。鹿乃子が一匹の猫とメザシを巡って必死の攻防を繰り広げていたのだ。しかし、極度の空腹と疲労で、鹿乃子はその場に崩れ落ちてしまう。

 状況を把握した端崎は、すぐさま倒れた鹿乃子を介抱し、近くにある食事処「くら田」へと運び込む。そこは倉田達造(大倉孝二)とヨシ江(磯山さやか)夫妻が心を込めて営む、地元で愛される食堂だった。久しぶりに味わう人の温もりと、心のこもった食事は、孤独だった鹿乃子の心に染み渡るのだった。

 しかし、この温かな空間にも嘘が潜んでいた。倉田家の息子タロ(渋谷そらじ)が、おつかいから戻ってきたのだ。タロはおつりをごまかそうと嘘をつく。鹿乃子は自身の能力で即座にそれを見抜き、思わず「人を悪者にするような、そんな嘘はついちゃダメ」と強く反応してしまう。その場の空気が一変し、鹿乃子は自分の能力が再び周囲の笑顔を奪ってしまったと落胆する。その夜、左右馬の家で世話になることになった鹿乃子だが、ここにも長居はできないだろうと不安を抱えていた。

 翌朝、タロが突然姿を消す。のんびりと「つくもやき」の店を手伝う左右馬とともに、鹿乃子もタロ捜索に加わる。実は左右馬は、前夜のタロの様子や周囲の状況から、すでにタロの居場所を推理していた。それは稲荷神社で、タロが野良猫を密かに世話していたのではないかと見当をつけていたのだ。左右馬の観察眼は人の些細な変化を見逃さない。

 2人が稲荷神社に向かうと、そこで不審な男を発見する。「小さな男の子を見かけませんでしたか?」という問いに、男は「見てない」と嘘をつく。鹿乃子はその嘘を感知し、男を追跡。男は山奥の古びた小屋に火を放つ。実はタロは、猫を気にかけてこの場所を訪れた際、男が死体を埋めようとしている現場を目撃してしまっていたのだ。

 追いついてきた左右馬が「その中に子どもがいるだろ?」と男に迫ると、「いませんよ、子どもなんて」という返答。鹿乃子がそれを嘘だと断言した瞬間、左右馬は躊躇なく燃え盛る小屋に飛び込む。煙と炎の中でタロを発見し、命がけで脱出に成功。左右馬の勇気ある行動と鹿乃子の特殊能力が、見事にタロの命を救ったのだった。

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