『新宿野戦病院』宮藤官九郎が描く会話の理想的なあり方 実に巧妙な脚本の技術が冴え渡る
堀井の一連も、この独居老人の一連も、今回のエピソードで描かれるあらゆる事象は“話をすること”、すなわち会話/対話――それによってお互いをもっと知る――ことの必要性という面で共通しているのではないだろうか。事故を起こしてまごころに運び込まれてきた堀井の母。処置室で女性の看護師として母親の処置を行い、ヨウコ(小池栄子)や亨(仲野太賀)に自身のバックグラウンドを話す堀井。強要するわけでも聞き流すわけでもなく、自発的に話をする堀井に、「気になる」とだけ伝え、処置を適切に進めながらしっかりと耳を傾けるヨウコと亨。それによって複雑な感情が整理されていく、会話の理想的なあり方が示される。
また「お互いのことをよく知らなすぎるから」と、横山や亨は田島(馬場徹)が泌尿器科医になった理由を訊ねてみたり、亨が舞(橋本愛)とともにホームレスの支援に向かい、邪険に扱われても彼らの心を解きほぐすまで向き合うことも然り。もちろん舞と勇太(濱田岳)の“カルチャー”な関係に苛立つ亨の姿は、この三者の間にもっと会話の必要性があったということでもあろう。こうして作劇において極めてシンプルな会話・対話というものを複数、それぞれにドラマ性とユーモア性を与え、組み込んでひとつのエピソードを構築する。実に巧妙な脚本の技術は今回も冴え渡っていた。
■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜 22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
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