『サザエさん』『クレしん』『コナン』 長寿アニメ“価値観アップデート問題”を考える 

 一方、『名探偵コナン』や『クレヨンしんちゃん』といった作品では、「登場人物の年齢は不変」という設定の下、時代設定を現代に合わせる手法が用いられている。その結果、コナンは永遠の小学1年生、野原しんのすけは5歳児のままで物語が進行し、小道具などを通じて時代の変化が表現されているのだ。

 例えば、コナンが蘭に電話をかける際、初期は公衆電話を使用していたが、その後PHSやポケットベル、ガラケー、スマホへと変化している。『クレヨンしんちゃん』でも、放送開始当時は存在しなかったスマホやSNSが登場するなど、常に時代の変化に合わせているのだ。これらの作品は、登場人物の年齢を固定しつつ、小道具や背景を巧みに変化させることで、時代の流れに適応しているのである。

 ただし、こうした世界観設定に力を入れていても、意外なところで時代のズレが影響してしまう場合も。『クレヨンしんちゃん』に登場するしんのすけの父・ひろしの年収は約600万円前後とされ、公式サイトでは「安月給のサラリーマン」と言われながらも、時代が進むにつれ相対的に裕福になっている。35歳で係長、マイカーを持ち一戸建てに住み、さらに子供が2人に犬までいる……。もはや令和の時代ではひろしはとても庶民とは言えないのではないか。

 とはいえ、このような若干のズレさえもクスッと笑って愛されているのが長寿アニメの良いところでもある。国民的アニメには「お決まりの時間にお決まりの内容」という独特の様式美があり、それが広く受け入れられている。だからこそ、今の時代ではまず考えられないような展開や要素も、ある意味では“この世界の中でのお決まり”と受け入れられる側面もあるに違いない。

 長寿アニメの価値観を無理に時代に合わせるのではなく、当時は日常アニメとして親しまれていた作品が、今では一種の時代劇のような役割を果たしていると考えるべきなのだろう。

参照
※ https://shueisha.online/articles/-/250425#goog_rewarded

■放送情報
『サザエさん』
フジテレビ系にて、毎週日曜18:30~19:00放送
声の出演:サザエ:加藤みどり、カツオ:冨永みーな、ワカメ:津村まこと、タラオ:愛河里花子、フネ:寺内よりえ、マスオ:田中秀幸、波平:茶風林ほか
原作:長谷川町子
プロデューサー:渡辺恒也、田中洋一
制作:フジテレビ・エイケン
©️長谷川町子美術館
公式サイト:https://www.sazaesan.jp/

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