声優とキャラクターの“同一視問題”を考える “マルチタレント化”も影響か?
一方で、アイドルジャンルのライブなどで、声優を見て「○○(その声優が声を当てているキャラクター)が存在していた……」と感じるファンもいる。声優がキャラクターになりきってライブをするようなコンテンツでは、ライブ中に限って同一視することもあるかもしれない。また、全ての声優に対してキャラと同一視をするのではなく、“推し声優にだけ”キャラ=声優思考になるファンもいるはずだ。
さらに、これらのトピックが声優の間でも共通認識のトピックとして扱われていることがわかるやりとりもある。
「すぐ役と声優さんを合致するなお前らは!」
これは声優・櫻井孝宏が「『アクティヴレイド』ニコ生~ダイハチ広報部~」という2016年の生放送番組で発した言葉である。本番組では、櫻井をはじめ、島崎信長、小澤亜李、石上静香の4人の声優がテレビアニメ『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』のキャラクターについての印象を述べるコーナーがあり、小澤はそこで、花江夏樹が演じるミュトスについて、「変人」というキーワードをあげた。島崎は即座に、「これは花江っちとは関係ないよ!」と視聴者に主張し、それを受けて櫻井が上記の言葉を発したのだ。
1980年代後半から声優のアニメイベントへの出演による「顔出し」が一般的になったと言われているが、やはりこうした問題は“中の人”たちにとっても無視できないものとなってきているのかもしれない。キャラクターと声優の同一視は、ファンの間で意見が分かれる複雑な問題であり、一概に正解があるわけではない。とはいえ、SNSで他の視聴者の反応が見やすくなった今、「同一視問題」に対する注目はますます集まっている。さまざまな解釈ができる“アニメ”というプラットフォームだからこそ、お互いの価値観を尊重しながら、健全なファン活動を心がけることが求められるのではないか。