『イップス』は“考察ブーム”の逆を走る 第5話までのタイトルを公開した意図とは?

『イップス』は“考察ブーム”の逆を走る

 ミコと森野が自身の“イップス”をメッセージ上で打ち明ける第1話では、ふたりが仮想空間にいるようなシーンに。そのほかにも、死体がそばにあるのに森野とミコがまったく気づかなかったり、ミコが事件を整理する場面ではテロップで文字が浮かんだりと、オークラが描く脚本を見事に可視化して、ドラマを盛り上げた。

 そして何より驚いたのは、第1話本編終了後である。次回予告前に視聴者を驚かせることがあった。それは、「これからのイップス!」というナレーションと共に、第2話〜第5話までのタイトルを事前に公開したこと。放送後、SNSでも「新しい」「斬新すぎる」「面白い」とのコメントが飛び交った。

 あまり見かけない手法ではあるが、視聴者が楽しみにする“犯人を当てる推理要素”が薄まる倒叙ミステリーという観点からすれば、非常に有効的。先にタイトルが分かっていても何の問題もないし、むしろ期待感が煽られる。映画の冒頭5分先行公開動画を観たあの感覚、ネットがない時代、漫画雑誌で大人気RPGゲームの最新情報を食い入るように見ていたあの感覚と似ている。タイトルが公開されたことで、“どうなるんだ!?”とワクワクしたのだ。

 
 近年、ドラマ界ではSNSと親和性の高い考察ブームが巻き起こっているが、そもそも倒叙ミステリーの『イップス』は、“それ”とは真逆の立ち位置。考察要素を加えなくても(森野とミコがなぜイップスになったのか、など謎はあるけど)、ここまで観る人を釘付けにした。コミカルな会話劇や独自の世界観など“内容の面白さ”だけで、考察が当たり前になった令和の視聴者を魅了したのだ。

 考察系ドラマは面白いし、グッと見入ってしまう。だけど、こんなドラマがあったっていい。『イップス』はそんな役割を担っていると思う。

 タイトル事前公開の意図は分からないが、事前情報をシャットアウトしがちな近年のドラマの真逆を走ることで、唯一無二となった本作。「肩の力を抜いて純粋にドラマを楽しんでほしい」。そんなチームの想いも感じた先行公開だった。

■放送情報
『イップス』
フジテレビ系にて、毎週金曜21:00~21:58放送
出演:篠原涼子、バカリズム、渡辺大知、味方良介、足立英、勝村政信、角田晃広、矢本悠馬、染谷将太
第2話ゲスト:藤原季節、細川岳ほか
脚本:オークラ、森ハヤシ
演出:筧昌也
プロデュース:宮﨑暖
プロデューサー:熊谷理恵
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/yips/
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