髙橋海人は“劣等感”の芝居が抜群に上手い! 『95』Q役で平成初期のムードを体現

『95』髙橋海人は“劣等感”の芝居が上手い

 その象徴と言えるのが、翔(中川大志)の「今を生きる」。リアルタイムで『ロング・ラブレター』を観ていた世代としては決してスルーできないセリフだ。第1話では秋久ことQ(髙橋海人)が地下鉄サリン事件をきっかけにして、翔が率いるチームに入ることになる。Qが抱えているのは焦燥感。インターネット元年と呼ばれた95年は、ウィンドウズ95がようやく発売された、まだインターネットが一般的に流通していない時代。テレビや雑誌に情報を求め、その真偽がそれぞれに委ねられていたからこそ、ノストラダムスの大予言のような現代では一蹴されそうな噂も流布してしまったのではないかと、SNSが発達した今とはなっては思える。

 「あとはなに、戦争かウイルス? 流石にそうなったら笑っちゃうよな」という翔のセリフは、令和に生きる我々に対する“メタ発言”であるが、第1話の中心にあるのは、Qと翔の3度にわたるやり取り。高校生にしてチームのほとんどのメンバーがタバコを吸っている描写(しかも路上喫煙)は注意テロップを出さなくて大丈夫なのかと心配になってしまうが、煙を燻らせながら翔は、ただぼんやり終わりを迎えようとしているQをチームに誘っていく。

 
 中川大志にとって、髙橋海人は学生時代の後輩。意外にも今作が初共演となり、すでに抜群のコンビネーションを発揮しているように感じる。印象的なのは、Qが警察に補導されかける前の「俺は……!」という絶叫。『だが、情熱はある』(日本テレビ系)での演技を筆頭にして、抑え込んでいたネガティブな感情を一気に爆発させる、そんな劣等感を抱えた人物の芝居が髙橋は抜群に上手い。それは『95』にキャスティングされた理由、Qがハマり役であるとも言えるだろう。

 “世界の終わりの始まり”という時代の変わり目に、翔と出会ったQ。物語は45歳となった秋久(安田顕)が取材の中で新村(桜井ユキ)に当時の出来事を話していく形式で進んでおり、第1話の冒頭には激しい殴り合いの末にQが翔に拳銃を向ける姿も映し出されている。本作のヒロインである岸セイラ(松本穂香)との恋愛やチーム一人ひとりとの関係性など、これから楽しみな要素は多くある。95年という“今”を生きた、Qたちの熱く、そして儚い物語が始まった。

■放送情報
テレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23『95』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06〜放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後から第1話から最新話まで見放題配信
出演:髙橋海人、中川大志、松本穂香、細田佳央太、犬飼貴丈、関口メンディー、浅川梨奈、工藤遥、井上瑞稀、渡邊圭祐、鈴木仁、三浦貴大、山中崇、紺野まひる、勝矢、嶋田久作、新川優愛、桜井日奈子、斉藤由貴、桜井ユキ、安田顕
原作:早見和真『95』(角川文庫)
脚本:喜安浩平
監督:城定秀夫
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:King & Prince「moooove!!」(UNIVERSAL MUSIC)
チーフプロデューサー:森田昇(テレビ東京)
プロデューサー:倉地雄大(テレビ東京)、清家優輝(ファインエンターテイメント)
制作:テレビ東京
制作協力:ファインエンターテイメント
製作著作:「95」製作委員会
©︎「95」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/tx_95/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/tx_drama95
公式Instagram:https://www.instagram.com/tx_drama95/

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