『ザ・ファブル』佐藤明役・興津和幸に聞く“プロの定義” 「成長する志を持った人がプロ」

『ザ・ファブル』興津和幸が語るプロの定義

興津和幸「プロだと思った瞬間にプロじゃなくなる」

ーー確かに「プロ」への高い意識の表れだったように感じます。興津さん自身は、「プロである」ことについてどのように考えていますか?

興津:成長し続けられる人がプロです。仕事をしてお金を儲けられる人が一般的にはプロだと思っているんですけど、それは外から見てプロなだけであって、環境というのは日々変わっていくんです。その環境の変化に常に対応し続けられる、成長する志を持った人がプロかなと思います。でも、成長しなきゃいけないと思ってるから、本人は多分プロだと思っていない。だから、プロだと思った瞬間にプロじゃなくなるみたいな……。不思議な感覚です。

ーープロとして尊敬されている方はいますか?

興津:今回出てる人たちも皆さんプロです。ヤクザの若頭で海老原役の大塚明夫さんも、作品の中心となる人物を演じるにあたって関西弁を学びつつも、お芝居がちゃんと心の通った言葉になるように工夫されていらっしゃるし。加えて、分からないことがあれば積極的にコミュニケーションも取られていて、本物のプロだなと思っています。

ーーもし興津さんが佐藤のように1年間何かするのを禁じられるとしたら、何が一番大変そうですか?

興津:嘘をつかないことかな(笑)。嘘をつかないで生きていけと言われるとちょっと生きづらいですよね。役者って嘘つきじゃないですか。特殊な職業をしてるから、というのはあると思いますが、自分をさらして生きていけと言われると難しいと思います。

ーーまた、その1年間、声優以外の仕事をするとしたら何の職業に挑戦してみたいですか?

興津:工場で働いてみたいです。

ーー工場ですか?(笑)

興津:機械がいっぱいあって楽しそうじゃないですか。単純作業を極めることに興味があります。工房で物を作るとか、刀鍛冶になってみるとか、大木を切るとか、実際に物として残る仕事をしてみたいかな。声は残るけど目に見えないですからね。アーカイブとしてはあるけど、再生しないと楽しめないし、一目で良さは分からないし。形として見える物、残る物を作ってみたいです。

ーー佐藤を演じるにあたって、髙橋良輔監督から指示などありましたか?

興津:オーディションのときに、それぞれのキャラクターの声のイメージと作品での役割が記されたメモをいただいたんですけど、佐藤明については「まだイメージを特定できておりません」ってはっきり書いてあったんです(笑)。だから、好きにやりました。

ーー佐藤は本当に謎が多いキャラクターだと感じます。

興津:僕は妖怪が好きなんですが、佐藤は妖怪みたいなものだと思っています(笑)。完全につかまえちゃうと、もう佐藤じゃなくなるみたいな。監督は、佐藤は鏡のような存在だとおっしゃっていました。相対するキャラクターたちが、佐藤と会話することで何かを感じて、自分について考えていくような存在だと。

ーーそういう意味では、佐藤は今までにない主人公かもしれないですね。

興津:普通は周りのキャラクターがいろんなことを巻き起こして、主人公に影響を与えて、主人公が変化する様子を見ていくものだと思います。でも今回は、佐藤が周りを翻弄していく立場なんです。例えば王道の漫画の主人公だと、ライバルや敵に勝って成長したことが分かりやすく描写されているけど、現実的な成長ってそうではないじゃないですか。だから、目には見えない自分の中での小さな成長だったり、葛藤のようなものを演じる上で表現できたらいいなと思ってます。

ーー普段は物静かな佐藤が、お笑い芸人のジャッカル富岡のギャグには大笑いしているというギャップも面白かったです。

興津:まさしく、そこが佐藤の人間らしい部分だと思っています。普段は感情を抑えて、目立たないようにしてどこにでも溶け込めるようにしているけど、絶対に抗えないものがジャッカル富岡なんです。そういう人間臭さを表現する上で、佐藤にとって大事な存在ですね。

ーー他に印象的だったサブキャラクターは?

興津:怖い業界の人たちが怖いのは当たり前なんですけど、オクトパスにいるしれっと犯罪行為をしている貝沼が、実は一番怖いんじゃないかと思ってます。盗撮も不法侵入もしてますし(笑)。不法侵入シーンの撮影はまだ線画の状態だったのですが、めちゃめちゃ怖かったです。みんなで怖い怖いって言いながらやってました。

ーーインパクトがありますよね(笑)。

興津:法律を犯すのは基本的にダメなんですけど、じゃあ犯さなきゃOKなのかっていう話で。その点で、貝沼は普通ってなんだろうって考えさせてくれるキャラクターです。正義と悪は難しいですよね。

ーー普通であることが一番難しいかもしれないですね。

興津:結局、佐藤も普通の人も紙一重なんですよ。だからこそ、そこで生まれる違和感を楽しんでいただきたいと思っています。

■放送情報
『ザ・ファブル』
日本テレビ系にて、4月6日(土)スタート 毎週土曜24:55〜放送
ディズニープラスにて、地上波放送終了後より世界独占配信
キャスト: 興津和幸、沢城みゆき、花澤香菜、大塚明夫、津田健次郎、小村哲生、福島潤
原作:南勝久『ザ・ファブル』(講談社『ヤングマガジン』掲載)
監督:髙橋良輔
シリーズ構成:高島雄哉
脚本:高島雄哉、森田眞由美
キャラクターデザイン:大下久馬、長谷川早紀、羽山淳一
アニメーション制作:手塚プロダクション
©︎南勝久・講談社/アニメ「ザ・ファブル」製作委員会
公式サイト:https://www.vap.co.jp/the-fable-anime/
公式X(旧Twitter):@the_fable_anime

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