米空軍の父を持つ立場から観た『オッペンハイマー』 描写における“違和感”の正体とは

日米ハーフが観た『オッペンハイマー』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、元米空軍曹長・航空機及び軍車管理総監督の父と米空軍病院で働く日本人の母の間に生まれた佐藤が『オッペンハイマー』をプッシュします。

『オッペンハイマー』

 先日、本作をいち早く観ていたニューメキシコ州に住んでいる叔父から連絡があった(ちなみにニューメキシコは、作中でも登場する「トリニティ実験」と呼ばれる人類最初の核実験が行われた場所でもある)。アメリカの教育課程でオッペンハイマーという人物についてある程度の知識を持っていたという叔父は、「オッペンハイマーとアインシュタインの考えさせられる関係」に最も興味を持った反面、「戦争の残酷さと、核により人生が永遠に変わってしまった何百万人もの当事者がいたことに対する余韻(後味的な) 」が足りなかったと語っていた。私は、叔父と話している中で自分の中に残る違和感の正体を発見した。

 まず、本作が日本で公開されることの意義を考えたい。米国では2023年7月に公開され世界的なヒットを記録したが、原爆を扱った作品ということで日本では未公開となっていた。同時期に公開され話題を集めていた『バービー』とかけあわせて「バーベンハイマー(Barbenheimer)」という造語も誕生する騒動もあった。

 しかしだからと言って、世界唯一の被ばく国である日本人がこの作品を観られないという状況はもっと悲しいことだったと思う。そういった経緯があった中で、2023年12月に配給会社のビターズ・エンドが「本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定いたしました」と声明を発表し、本作の日本公開が正式に決まったのは実に意義深いことであった。

 3時間にも及ぶ超大作である本作は、第2次世界大戦中、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命された物理学者のロバート・オッペンハイマーをモデルにした伝記映画だ。

 
 そんな本作の大きな特徴は、物語が“3つの時系列”をシャッフルさせながら展開していく点にある。オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)の学生時代から原子爆弾開発「マンハッタン計画」に携わる経緯と、ソ連のスパイ容疑をかけられたオッペンハイマーが追及を受ける聴聞会、そして、アメリカ原子力委員会委員長ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)の公聴会のシーンの3つ。

 この3つの時系列で絶えず入り込んでくる情報を追いながらでも、背景に常に音楽が流れていたり、モノクロとカラーを使い分けていく演出によって、常に“緊張感”が保たれているところが興味深い。特に、“原子爆弾を日本に落とす”というゴールに向かっている部分は非常に心臓に悪かった。内容は濃密で、どのシーンも決して見逃すことはできないため、事前に登場人物の情報を入れておくと、置いていかれることなく楽しめるかもしれない。

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