『夜明けのすべて』松村北斗×上白石萌音の“優しさ”に感じた本音 温かな演出に救われる
先述したように、本作では徹底的に“優しい世界”が描かれている。だからこそ、他者から無意識で放たれる“棘のある優しさ”が際立つような作りになっている。その無意識の棘について私たちが自覚的になれることこそ、本作が持つ唯一無二の魅力だ。
そしてそれには16mmフィルムで撮られた映像が果たしている効果も大きい。光の切り取り方、映し方について、シーンごとに意味のある光が映し出されていることで、登場人物の心情変化や、それぞれが纏う光と影の変化を繊細に感じ取ることができる。
原作を読んでいないので確かなことを言えないが、ラストシーンの演出はきっと三宅監督の優しい眼差しによるものなのだろう。決して褒められるものではない意見を持っていた自分が、本作を通して温かい気持ちになれたのは、きっと監督の演出があったから。どんな人であっても、本作を観終わってしまえば、不思議と周りの人たちに優しくしたくなるはず。人肌のような温かさを感じる映画だった。
■公開情報
『夜明けのすべて』
全国公開中
出演:松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、久保田磨希、足立智充、りょう、光石研
原作:瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社/文春文庫刊)
監督:三宅唱
脚本:和田清人、三宅唱
音楽:Hi’Spec
製作:『夜明けのすべて』製作委員会
企画・制作:ホリプロ
制作プロダクション:ザフール
配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース
©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
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