『厨房のありす』心護が護った頑張りすぎてしまう人の心 大森南朋が2つのパートを繋ぐ

『厨房のありす』大森南朋が繋ぐ2つのパート

 人は誰もが生きる意味を探している。自分の存在価値が欲しいと思っている。『厨房のありす』(日本テレビ系)第3話では、それゆえに頑張りすぎてしまう人の心を、心護(大森南朋)が護った。

厨房のありす

 臨月を迎えた和紗(前田敦子)の生まれてくる赤ちゃんの名前を考えてほしいと頼まれたありす(門脇麦)。名前には「こういう子に育ってほしい」という親の願いが込められていることを知ったありすは、自分の名前の由来を心護に聞いてみることに。すると、心護はありすの母親が、ハンセン病に有効な治療法を開発し、ハワイ大学で初のアフリカ系アメリカ人かつ、女性の教授になった化学者のアリス・ボールから取ってつけたものだと説明する。当時、マイノリティだったアリス・ボールのように、逆境にも負けず、強くて立派な女性になってほしい。ありすは、そんなふうに母親が願った自分になれているのかと自問自答するのだった。

厨房のありす

 そんな中、ありすのお店に今にも倒れそうだった常連客の優奈(新井郁)が和紗の父・定一郎(皆川猿時)によって連れてこられる。優奈は息子・空の受験勉強のことで義母の陽子(円城寺あや)から追い詰められ、限界寸前だった。にもかかわらず、息子が受験に落ちたら自分には存在価値も居場所もなくなると一人で思い詰める優奈。そんな彼女に心護が語るのは、子育てから得た教訓だ。

厨房のありす

 ありすが3歳の時に引き取ってから、男手一つで育ててきた心護。だが、自閉症のありすを育てる苦労は並大抵ではなく、保育園でも友達と問題を起こしてばかり。それでも、ゲイであり、子どもを持つことを諦めていた心護にとって、一喜一憂するありすとの日々そのものが幸せだった。だけど、一人にできることには限界がある。心護はありすとの日々を守るためにも、他の保護者たちに助けを求めた。そんな中、自ら助けを買って出てくれたのが和紗の両親たちだ。ありすの心を護ってきた心護だが、その心もまた周囲の人々によって護られてきたのである。

厨房のありす

 「『助けて』って言っていいんだよ」という心護の言葉が、顔色の悪い優奈の心に響く。誰だって、大切な人のそんな顔を見たいわけじゃない。それは息子の空も同じで、自分のせいで追い詰められている母親を解放しようと彼はスーパーで万引きしようとする。そんな空を保護した倖生(永瀬廉)もまた、お店で足手まといにならないよう必死だった。和紗が休みの中、倖生が一人でホールを回すお店はもうてんやわんや。挙句にお店の通帳をなくすわで、まだまだお店の主戦力になっているとは言い難い。だけど、ありすは倖生が誰よりも頑張っていること、自分の苦手な強い照明から守ろうとしてくれる優しい一面があることをちゃんと分かっていた。

厨房のありす

「そんな倖生さんを私は信じています。倖生さんと一緒に働けて私は幸せです。これからもずっとずっと、私は倖生さんに幸せにしてもらいます!」

 ありすがいてくれるだけで心護が幸せなように、倖生がいてくれるだけでありすは幸せ。そんなふうに、人は生きているだけで誰かを幸せにしている。「こういう子に育ってほしい」という親の願いが込められた名前。もちろん、その通りに育ってくれたら嬉しい。だけど、それ以前に「幸せになってほしい」と親は誰しも願っているし、幸せに生きてくれていたら、それだけで親は幸せなのだ。親に限らず、自分を大事に思う人はみんなそう。だから、無理せず、限界だと思ったら周りに助けを借りる。その大切さを心護が語る子育てエピソードから教わった。

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