『厨房のありす』はハートフルなドラマでは終わらない? 永瀬廉が“切ない瞬間”を体現

『厨房のありす』はハートフルだけじゃない?

 もっと要領よく生きられたらいいのに。そういう思いが少しでもあるなら、1月21日よりスタートしたドラマ『厨房のありす』(日本テレビ系)の主人公・ありす(門脇麦)を取り巻く優しい世界に触れてほしい。

厨房のありす

 ありすは、「料理は化学です!」が口癖の料理人。街の小さなごはん屋さん『ありすのお勝手』で、膨大な化学の知識を基に、お客さんのその日の健康状態や精神状態に合ったごはんを作っている。でも、接客はしない。なぜなら、自閉スペクトラム症のありすは人とのコミュニケーションが苦手だからだ。

 自閉スペクトラム症は発達障害の一つで、他にも特定の物事へのこだわりが強く、音や光などの刺激に敏感といった特性を持つ。そのため、安心安全が保障されたテリトリーとも言える厨房から、小窓を通じてありすは目でお客さんの様子を眺めている。

厨房のありす

 子育てで忙しく寝不足のお母さん、好きな人への告白前で緊張している青年、ダイエットの影響か貧血気味の会社員……。お客さんにはみんなそれぞれの日常があり、その中で身体の不調や心の悩みを抱えている。ありすはそれを直接解決する力は持ち合わせていない。彼らに今、必要なものや不足しているものを栄養バランスの取れた食事で補ってあげる、ただそれだけ。それだけだけど、みんなに少しでも元気になってほしいという、ありすの優しさが料理を通じてお客さんの心と身体を満たしていく。

厨房のありす

 ご飯を食べたら、なぜだか泣けてきた。そんな多くの人が経験したことのある、ちょっと切ない瞬間を体現するのが永瀬廉。彼が演じる倖生は、住み込みバイト希望で突然ありすの店に飛び込んできた。風貌は普通だけど、無愛想で何を考えているかいまいち分からないために、ありすの幼なじみで店のホール担当の和紗(前田敦子)と父親の心護(大森南朋)から怪しまれて1日に2回も警察に通報されかける。ありすに気に入られて住み込みで働けることになるも、少しでも役に立とうと台所に立てばボヤ騒ぎを起こしてしまうなど、傍から見ると、ちょっとハラハラする不器用な青年だ。そんな彼だから、いろいろと上手くいかなかった過去があるのかもしれない。履歴書以上に、ありすが作ってくれた疲労回復効果のある豚の角煮を食べた瞬間から流れる倖生の涙がそれを物語っている。

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