『違う惑星の変な恋人』を観てサッカー日本代表を応援だ! 綱啓永の放つ“緩さ”にアコガレ
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は大学生の頃は海外サッカーチームのユニフォームを着ている自分がおしゃれだと思っていた石井が『違う惑星の変な恋人』をプッシュします。
『違う惑星の変な恋人』
今から10年以上前の大学生の頃、海外サッカーチームのユニフォームやジャージを普段着として着用しておりました。今は街中でほとんど見かけない気がしますが、当時はなんとなくそれが自分基準では“流行り”に乗っかれている、個性を出せているような気がしたのです。少し浮いているとは気づかずに……。
しかし、そんな自分もサッカー日本代表戦では皆の輪の中に自然と溶け込むができました。そう、当時も今も、誰が着用しても、「なんかいい!」となる日本代表の青いあのユニフォームがあったからです。決してサッカー大好きというわけでもないのに、部室で、友達の家で、スポーツバーで、なぜか観ていたサッカー日本代表戦。あの問答無用で見知らぬ人とも一体となれる空気は、ミーハーと言われようがスポーツ観戦の醍醐味だなと感じます。
地上波放送の減少にともない、10数年前の盛り上がりが減っているような気がしますが、この映画を観れば、また誰かと一緒に代表戦を観たくなる(?)。それが木村聡志監督作『違う惑星の変な恋人』です。
劇中は、日本代表が世界にサプライズを起こした2022年のカタールW杯の頃。主な登場人物は、同じ美容室で働くむっちゃん(莉子)とグリコ(筧美和子)、グリコの元カレ・モー(綱啓永)、グリコの知り合いの音楽関係者・ベンジー(中島歩)の4名。この4名の恋の矢印が誰も向き合わずという、いわば四角関係のお話なのですが、恋のドロドロ感は一切なし。基本的に誰も声を荒げることもなく、罵り合うこともありません。『葬送のフリーレン』のフリーレンのごときテンションです。
もちろん、4人とも無感情などではなく、はっきりと「好き」を証明するし、いろんな行動も起こします。それでも、相手を下げること、矢印が違う相手を否定しないため、そこには基本的に争いは起きません。それはともすれば劇映画としては決してありがたい形ではなく、争ってくれたほうが物語にはしやすいはずなのに。それでも本作がはっきりと面白いと言えるのは、軽妙なセリフのやり取りに詰まった知性とダメさと、メインキャスト4人の“間”が最高だからなのです。
とりわけ、モー役の綱啓永氏は、カッコいいのにカッコよくみえない(褒めてます)、変人としての佇まいが最高です。学生時代だったら絶対になれないのに、あの緩さにアコガレてしまい、大怪我をするやつです。一歩間違えれば、本当の変な人になってしまうところを、「違う惑星の人」にとどめられる見事なさじ加減。黒髪真面目メガネキャラとなった『恋愛のすゝめ』(TBS系)、8LOOMのメンバーとして輝きを放った『君の花になる』(TBS系)をはじめ、すでにその魅力は多くの人が知るところですが、本作をきっかけに作り手から今まで以上に求められる役者になるのではないかと確信しております。