『ぎぼむす』涙なしには観られなかった母娘の旅立ち “2050年”の「ただいま」も期待!

『義母と娘のブルース』最高の“FINAL”

出会いと別れの繰り返し、それでも人生は続いていく

 両家の親から結婚の承諾を得られたみゆきと大樹が最も大人になったと感じた瞬間は、亜希子が末期がんなのではないかという疑惑が生まれたときのことだった。亜希子のタイミングで言ってくれるはずだと、信じてすぐには問いたださず、“そのとき”を待つことに。

 亜希子と博美が娘と息子の結婚に「子どもを信じる」という試練を感じたように、親の死を意識したときには子どものほうが「親を信じてみる」という難しさにぶつかるのかもしれない。親と子であっても個人と個人。それぞれの生き方については、相手の意思を尊重していくことが家族として最も大切なことなのだと、亜希子とみゆきの関係を通じて考えさせられる。

 結局、亜希子の末期がん疑惑は勘違いで済んだのだけれど、いずれその死が来ることは避けられない。だから、思い違いの上で、読み上げられた花嫁の手紙は、いつか本当にそのときが来たときの想いと変わらないはずだ。

 この13年間たくさん愛を与えてくれた亜希子に、いつまでも元気で「ご指導ご鞭撻のほど……」と言いかけて「返していきたい」と言い換えたみゆき。それには長い長い時間がかかるから「死んでも長生きして」と続ける。

 そんなみゆきの言葉に対して、亜希子が「いろんな仕事をしてきましたが、あなたの母親という仕事は私にとって最もペイの高い仕事でした」と答える。そして「ごはんを作れば1億円の笑顔が返ってくる。寝顔を見ているだけで時間外手当をもらった気になる。一体私は13年間でいくらいただいたのでしょう。それはおそらく、ゆうに国家予算を超えることでしょう」とも。

 バリバリのキャリアウーマンだった亜希子だからこその、彼女らしい例えを微笑ましく思いながらも、目頭が熱くなるのを止められなかった。子どもの巣立ちに、親の旅立ち。出会ったからこそ、避けられない別離。それでも人生は続くから。いつか必ずそのときを迎えるのだから。いつでも心を温めてくれる、小さな奇跡の思い出を大切に生きていこうと思わされる。

2050年お正月の「ただいま」を待ちながら

 最後の最後まで温かな気持ちにさせてくれた『ぎぼむす』。この作品がドラマとしての愛らしさを増しているのは、亜希子とみゆきのそばにいる麦田ベーカリーの店長・麦田(佐藤健)の存在が欠かせない。今作でも変わらずに亜希子のことを想い続け、ついにはプロポーズまで決行するのだが、そのお返事は「追ってご連絡」のまま2050年までお預け状態に。

 きっと2050年になっても、亜希子の心の中には変わらず良一(竹野内豊)がいるのだろう。良一は三途の川のほとりで「成仏できていない」なんて笑っていたが、臨死体験をした亜希子と同じ風景を健康体そのものなみゆきが見ているあたり、あれは生きている側の人間が見せる願いの景色なのかもしれない。

 いつか自分が死を迎えるときに、先に天国に行った大切な人と再会したいとは誰もが思うこと。亜希子とみゆきのその想いが強いからこそ、良一はあの場所にいてくれるのではないだろうか。そう思うと、残念ながら麦田の恋心は成就する可能性は限りなく低い。

 でも、その報われない想いに悲観することなく、ずっとそばにいて「ご連絡」を待ち続けるのも、ひとつの幸せなのではないかと思わせてくれる。なぜなら、それは「完結」と言われたドラマであっても、いつかと嬉しい「ご連絡」を待ちたい私たちも同じことだから。

 もし、今作のエンドロールのように、みんなが幸せに年を重ねて2050年のお正月を元気に迎えることができたなら。また『ぎぼむす』が「ただいま」と言ってくれないだろうか。そんな大きな奇跡を待ちながら、それぞれの人生を歩んでいこう。それまでは小さな奇跡を探しながら「では、いってらっしゃいませ!」。

■配信情報
『義母と娘のブルースFINAL2024年謹賀新年スペシャル』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、上白石萌歌、井之脇海、吉川愛、奥貫薫、真凛、松下由樹、遠山俊也、宇梶剛士、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:桜沢鈴『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)
脚本:森下佳子
演出:平川雄一朗
音楽:髙見優、信澤宣明
主題歌:MISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」(アリオラジャパン)
プロデュース:中井芳彦、飯田和孝、大形美佑葵
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/
公式X(旧Twitter):@gibomusu__tbs

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