吉岡秀隆の出演作はなぜシリーズ化されるのか? 『Dr.コトー診療所』などから考える

他の役者にはない吉岡秀隆の目力と経験

 吉岡秀隆が主演を務める映画『Dr.コトー診療所』が地上波放送される。コトー先生を演じる吉岡といえば、2023年10月期に日本テレビ系で放送された『コタツがない家』でのうだつのあがらない夫役が話題になっていた。ダメ男からコトー先生のような人格者まで、幅広く振り切った演技を見せる吉岡の魅力について触れたい。

 現在53歳の吉岡秀隆は、ゆったりとした優しい口調と繊細な演技が特徴的で、若い頃は思い悩む等身大の青年役を数多く演じ、大人になってからも人間味ある役者として愛されている。かつての吉岡といえば、『北の国から』(フジテレビ系)の純や、映画『男はつらいよ』での寅さんの甥っ子の満男などのイメージが強く、大人になっても活躍をしている感覚を持った人も多いかと思われる。だが時代は変わり、今や吉岡の子役時代を知らない世代が増えたこと、バラエティ番組などにはほぼ出演せず、『Dr.コトー』や『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズがヒットしたこともあり、どこか掴みどころのない演技派役者という印象を抱く人も多いのではないだろうか。

吉岡秀隆は“試練”を乗り越える俳優だ 『Dr.コトー診療所』が愛され続ける理由

2003年から2006年にかけて吉岡秀隆主演でドラマ化された『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)。16年ぶりの続編となる映画の…

 多くの作品がシリーズ化されるなど、なぜここまで吉岡の演技に視聴者を虜にするのか考えると、無理に飾らない演技が役柄の内面性を引き出し、それが優しさや人間味を感じるところにある。そして何より吸い込まれるような独特な目力。『北の国から』の成功も、子役にして、どこかネガティブで、怒り、悲しみ、時には親を憐れんでいるような引いた眼差し。演技力というものを超越したこの目力で、とつとつと囁くように語ってくる、この吸い込まれるような独特の世界観が他の役者にはない魅力だ。

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 それは、舞台や学校で演技を学んできたものではなく、子役時代に、山田洋次、倉本聰、黒澤明といった、映画・ドラマ界の巨匠たちのもとで育ち、『男はつらいよ』の渥美清や『北の国から』の田中邦衛といった名優たちの側でずっと芝居を見てきたからだろう。渥美の演技は、テンポの良い台詞回しと表情の豊かさで笑わすが、喜劇役者特有の言葉を発さない時の全身から伝わってくる哀愁と奥深さ。田中邦衛も、口下手で不器用な男だからこそ全身から伝わってくる感情といった、人としての奥深さを感じる演技を持つ。吉岡の飾らない演技とキャラクター性は、名優たちの血が脈々と流れていると感じる。こうした雰囲気のある演技ができると、主人公のキャラクター性だけを演じるのではなく、主人公の人生を背負っているような、演技を超えたものを感じさせる。

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