TVerは“テレビ”を超えるのか? ユーザー数を更新し続ける独自の戦略に迫る
「大きな変化といえば、インターネットに繋がったテレビ(CTV=コネクテッド・テレビ)であれば、テレビ画面でTVerを観ることができるようになったことです。CTV視聴の割合は伸びていて、今はTVer全体の再生数の3割ほどがCTVで観られています。YouTubeもテレビで多く観られているという発表がありますし、インターネットに繋がったテレビデバイスの需要が高いんですね。また、CTVのリモコン戦略にも注力しており、今はテレビのリモコンにTVerボタンがつくケースも多く、今年からAmazon Fire TV StickにもTVerボタンが導入されてきています」
今は様々な配信サービスがあるが、TVerの強みについて薄井氏はこう語る。
「全局全番組のコンテンツがまとまっているということ、それが無料で観られるということが、シンプルにして最大の強みだと思っています。『テレビのDX(デジタル・トランスフォーメーション)化』などとよく言いますが、テレビでできること、やっていることは全部できるようにしたい。1局しか映らないテレビを誰も買わないことと一緒なんですよね。1つに集まっていることが、価値なんです。また、それをただインターネットにのせるだけでは意味がないので、サウナやキャンプ、ホラーなど、特定のコンテンツだけを集めてみるような特集もたくさんやっています。そうしたテーマ切りで集められるのは、全局分の作品があるからできることです」
コンテンツ軸では、例えば次クールのドラマ予告だけまとめることで、全局全部の作品を予告から網羅的に知り、好みの作品をチェックできるのは、まさにテレビではできないこと。
また、機能軸でいうと、レコメンドをしたり、ドラマランキングから選んだり、お気に入り登録できたりすることも、テレビにはないことだ。
さらに、TVer発のオリジナルドラマ『潜入捜査官 松下洸平』も登場している。
「『潜入捜査官 松下洸平』はバラエティといかにコラボできるかに注力しました。ただ単にドラマを作るだけだったら、放送局と変わらない。TVerだからこそできるドラマとして、全局分のバラエティ番組が協力してくれるということをフックにしているわけです」
テレビにはできない、他の配信サービスにもできないことがたくさんあるTVer。では、「逆に課題は?」と問うと、薄井氏はこう語った。
「TVerの認知率は約70%です(2023年4月時点 株式会社マクロミル社調べ)。その一方で、無料だと知っている人は実は多くありません。まずは1回観る、次にもう1回観る、そこから毎日のように観てもらうところまでどうやってたどり着けるかが最大の課題であり、今は一番手前の関門として『無料の認知』があります。今もTVerを会員登録して月額払う他の配信サービスと同じだと思っている方がたくさんいらっしゃるんです。これからTVerがどんなサービスなのかをより知っていただく努力をし、さらに多くの方に使っていただけるサービスにできればと思っています」
■薄井大郎
取締役 サービス事業本部長。2006年に株式会社TBSテレビ入社。営業局スポット営業部、報道局社会部、編成局編成部を経て、2022年に株式会社TVerに出向。