『うち弁』前半戦を締めくくる“おじさん回” 声優のキャリアも活かされた津田健次郎の好演

『うち弁』

 『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)前半戦を締めくくる第6話のゲストは津田健次郎。主人公の蔵前(ムロツヨシ)の存在も相まって、杏(平手友梨奈)の口から何度も「おじさん」という言葉が連発される、いわゆる“おじさん回”だ。

 声優のみならず、映画、ドラマにおいても俳優としてキャリアを重ね、広い層に認知されている津田。その演じる多くの役が“イケおじ”と呼ばれる彼のイメージの延長にあると言っても決して過言ではないだろう。今回、津田が演じるのは、予備校講師として動画配信をしている麻生一郎。蔵前の同級生で、お店に行けば声をかけられるちょっとした有名人。家には温かい家庭があり、人前に出る仕事をしている一郎と、独り身でパラリーガルの自分とでは対極の存在にあると、蔵前は思っていた。

 しかし、蓋を開けてみると、麻生家の家族としての仲は冷え切っていた。一郎の配信に殺害予告をしていたのは、まさかの娘の光希(新井美羽)。妻の悦子(遊井亮子)も一郎がホテルのカフェで女性と会っているのを目撃し、離婚を考えていた。一郎は誹謗中傷をしているのが娘であることを知りながら、そのことを言い出せずにいた。家族の歯車が狂い出したのは、配信サイトにて「東大チャンネル」を始めたこと。一郎本人としては同じ東大を目指してくれている娘の姿が嬉しかったが、光希にとってはプレッシャー、はっきり言ってしまえばいい迷惑でしかなかった。

 平静を装いながらも、蔵前と会うたびに徐々に心が壊れていく一郎。その歪な笑顔に、蔵前は気づき、かつて自殺を図ろうとした自身と重ねていた。この芝居の塩梅が、津田は抜群に上手い。一郎がカフェで会っていたのは、メンタルクリニックのカウンセラー。表に出る側の人間は大きなストレスを抱える。ネットに投げた本人は覚えていないような一言でも、ぶつけられた側にとっては心に一生残る傷になることもあるのだ。一郎が蔵前に依頼した遺言書に書いてある妻と娘に宛てたメッセージをもって、家族は和解していく。この音読のさじ加減も難しかったのだろうと容易に想像がつくが、2人への感情を込めながら、しっかりと読み上げつつ、それでいて泣きすぎずという、まるで針の穴を通すようなトーンは、声優としてのキャリアも活かされた津田特有の芝居であるように感じられた。

 杏の「以上です!」のセリフは、すっかり本作を象徴するお決まりのフレーズとなっているが、第6話までの前半戦で杏もすっかり香澄法律事務所の面々と打ち解けてきた。今回珍しかったのは、辻井(村川絵梨)と意気投合した杏との「奥様に代わって」(辻井)、「お仕置きしましょう」(杏)という「ムーン・プリズムパワー・メイクアップ」しそうなコンビ。これには杏も乗り気で、“セーラームーンごっこ”をしてしまうのは、『セーラームーン』が世代を問わないアニメであることを表してもいる。

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