『どうする家康』松本潤×中村七之助、“無二の友”だからこその関ヶ原 戦なき世の夢は続く

『どうする家康』“無二の友”の関ヶ原

 『どうする家康』(NHK総合)第43回「関ヶ原の戦い」。西軍に圧倒的に数で劣る徳川家康(松本潤)は、野戦での勝負を決断した。決戦の地は関ヶ原。前回、家康は「この戦は、わしと三成、どちらがより多くを味方につけるかで決まる……」と呟いた。家康は大量の密書をばらまき、敵に切り崩しを仕掛ける。

 両陣合わせ15万が集結し、対峙した関ヶ原の地では、徳川勢が石田三成(中村七之助)勢に周囲を取り囲まれた。地の利を生かした三成勢優位のうちに戦いが始まり、三成の思惑通りに事が進む。だが、劣勢なはずの家康は顔色ひとつ変えなかった。第43回は家康と三成の経験の差が彼らの表情に表れるのが印象的な回である。

『どうする家康』

 秀吉(ムロツヨシ)が亡くなるまでの三成は、戦の前線に立つ猛者というよりも、強い忠義心を感じさせながらも冷静沈着で、才気あふれる印象があった。けれど、関ヶ原での大一番に臨む三成は勝利への気概に満ちており、その印象からは少し外れている。戦なき世を作る志を掲げていたはずの三成だが、狙い通りに家康が動いた時、「食いついた」と笑みを浮かべた顔は、戦いを求める人のものだった。

 小西行長(池内万作)曰く、三成は周囲から“知恵ばかりの戦嫌い”と思われていた。だが小西は「これほどまでに燃えたぎる熱き心がお主にもあったとはなあ」「紛れもなき乱世の武将ぞ」と感心する。三成側につく小西の言葉が三成の闘志を改めてたぎらせた。「石田三成勢、出陣!」と声をあげる三成の形相は猛々しい。

 一方で、家康は恐ろしいほど落ち着きを払っている。三成勢に取り囲まれ、「ここが我らの果てる地じゃ」と口にしつつ、怯えることもなければ慌てふためくこともない。背後に攻め込まれれば危ういという状況にあっても、顔色を変えず「調略の成果を祈るのみ」と敵の出方をうかがう。小早川秀秋(嘉島陸)や吉川広家(井上賢嗣)に動きがないと知ると、家康は前へ出た。物語冒頭で映し出された数々の戦を生き抜き、多くの者から恐れられる強き存在となった家康には、戦に勝つための立ち回り方も動くべき時も見えているのだ。

『どうする家康』

 家康が2万の主力を三成の目と鼻の先に押し出すと、三成も総がかりとなる。「面白い…」と勇ましく立ち上がり、感情をたかぶらせる三成に対し、家康は敵陣のど真ん中に飛び込んだにもかかわらず、やはり少しも表情を変えなかった。家康は、戦況を見極める小早川勢がいる方をチラと見ると「決断する時ぞ、小早川」と口にする。泰然とした家康を見ていると、小早川と吉川に動きが見られなかった時点で調略の成果は上がっていたのだとわかる。小早川勢に攻めかかられ、西軍の形勢が不利になっていくと、勇壮だった三成の顔つきに焦りが見られるようになる。

 両陣の激しい戦いが描かれる中、三成と家康の顔が交互に映し出された。三成は圧倒され、愕然とし、苦々しい面持ちで敗走する。じわじわと無力感に覆われていくように変化していく三成の表情とは対照的に、家康はただただじっと三成のいる方を見据えていた。戦場にいるとは思えぬほどに落ち着き払ったそのまなざしは穏やかにも映るのだが、それがかえって恐ろしくも思えた。周囲の者を畏れさせた信長(岡田准一)のものとも、“欲望の怪物”と呼ばれた秀吉のものとも違う、“戦巧者”家康だけのまなざしだった。

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