『きのう何食べた?』永遠に観ていたい“愛しい時間” S2で変わったもの/変わらないもの

 変わらないもの。変わっていくもの。絶妙に組み合わされた、その塩梅の心地よさ。それはまるで、互いを思いやる気持ちによって生まれた、第5話のシロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)のクリスマスメニューのようだ。

 ドラマ24『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)の日常は、2019年放送のseason1から、2020年放送の「正月スペシャル」、2021年上映の『劇場版 きのう何食べた?』を経て本作に至るまで、丁寧に描き続けてきた“シロさん”こと筧史朗と“ケンジ”こと矢吹賢二と、彼らの周りの人々の日々の蓄積であるとともに、「いろいろ変わっていくけど、悪いことばっかじゃない」と自分たちに言い聞かせながら必死に生きている私たち視聴者の日常と地続きで、だから無性に愛おしい。

 『きのう何食べた?』は、『大奥』のよしながふみによる同名漫画(講談社『モーニング』連載中)を原作に、『おかえりモネ』(NHK総合)の安達奈緒子が脚本を手掛けた人気シリーズだ。原作漫画は2007年から、テレビドラマは2019年からと、コロナ禍を挟んだ長い期間、2人の日々の食卓を通して移りゆく四季と、変わりゆく時代と、覚悟を持つ・持たないにかかわらず「年相応」に変化していく2人を描いてきた。金曜日の夜の約30分間、西島秀俊と内野聖陽という素晴らしい俳優たちによる安定感抜群のやりとりを観ることのできるこの幸せな時間をまた噛み締めることができるなんて、本当に、ケンジではないが、世の中「悪いことばかりじゃない」。

 さて、ここで、season2の肝の部分が集約されていると言っても過言ではない、第1話を振り返ってみたい。season2第1話は、「先週、低脂肪乳を2本買っておくべきだった!」というシロさんの台詞から、season1第1話でシロさんが、スーパーをハシゴして1軒目ではなく、2軒目で「低脂肪乳2本」を買えばよかったと後悔する場面を思い起こさせたりして、相変わらずの「変わらなさ」から始まる。

 一方で、シロさんは物価高ゆえの1カ月の食費の予算の変更を強いられ、ケンジは体重の増加とコレステロール値に悩むなど、随所に時代と、2人が共に過ごしてきた歳月の変化を感じさせたりもする。特に興味深かったのは、それまで通っていた「ニュータカラヤ(season1では中村屋)」の閉店のため、主戦場を「スーパーアキヨシ」に変更せざるを得なくなったシロさんが、「スーパーアキヨシ」で、元「ニュータカラヤ」の店員だったスーパーのお姉さん(唯野未歩子)に遭遇する場面だ。今度は「スーパーアキヨシ」の店員として、彼女は働いていたのだった。それは、スーパーの閉店という、現実世界におけるコロナ禍の影響を反映するだけでなく、シロさんとケンジの日常が「少しずつ変わってきてる」ものの、でも「結局いつもと同じ」であることの幸せを示しているととっもに、店員の彼女にとっての、受け入れざるを得なかった日常の大きな変化と、それでも変わらない本質的な部分を思わせるものさえあって、season2の現段階までの展開を鑑みても、印象的な場面である。

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