『ブギウギ』スズ子はなぜ事実を告げなかった? CPが絶賛する説得力を生んだ趣里の芝居

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

 第5週では、スズ子が生みの親であるキヌ(中越典子)のもとへ。自分がなぜツヤ(水川あさみ)に育てられたのか、実母にはどんな想いがあったのか、容易には受け止められない現実を付きつけられる。だが、スズ子はそのすべてを「お母ちゃんとお父ちゃんには内緒や」と胸の内にしまうことを決意。大阪に戻ってからも、育ての親であるツヤや梅吉(柳葉敏郎)と腹を割って話すことはしなかった。

左から、花田梅吉(柳葉敏郎)、花田ツヤ(水川あさみ)。 はな湯・休憩所にて。スズ子を心配するツヤと梅吉。

 この展開について、制作統括の福岡利武は「台本作りでも難しかったところで、脚本の足立(紳)さんともいろいろ話をしました」とし、「全部をさらけ出して『でも、わてはお母さんやと思っているよ』ということではなく、そこはスズ子に飲み込ませた上で、『ツヤが実の母であることには何の疑いもないんだ』というところを見せたかった」と語る。

「実際にツヤさんの中には、『自分が本当の母として育てたいんだ』という強い思いがある。その思いをスズ子自身も強く感じて、それをぐっと飲み込むほうが深いんじゃないかと。知ったことを全部話した上で“今の意見”を飲み込むより、言わなくても『家族なんだ』と受け入れていくほうが、スズ子らしくもあり、面白いんじゃないかと思いました」

 第22話では、自身の生い立ちを知ったスズ子が、川で遊んでいる子どもにまみれて、行き場のない感情をあらわにするシーンも印象的に描かれた。福岡は「自分の中でどうすればいいかわからない事実を知ってしまった。でも、どうすればいいかわからない反面、どこか冷静でもある。そういった複雑な気持ちがすごく表れていたと思います」と趣里の芝居を評価する。

「スズ子のつらさもわかるけれど、つらいほうに引きずり込まれすぎない。それが事実で自然なことだったんだな、と客観的にも見えるような、深い場面になりました。川底に寝そべる趣里さんは、見ている人が『大丈夫、大丈夫』と寄り添いたくなるような、本当にいい顔をしていらっしゃいました」

 撮影が行われたのは、天候に恵まれた4月末。「本番1回で撮りますし、難しい場面だったので神経質な撮影になるかなと思っていましたが、趣里さんは『川でロケをするのは気持ちいいですね』と(笑)。とてもリラックスされていました」とのエピソードからは、趣里の人柄も伝わってくる。

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