『唄う六人の女』竹野内豊&山田孝之は善悪の象徴だ 石橋義正監督が描く“真の美しさ”

 そもそも、山田孝之と石橋義正監督のタッグと言えば、約10年前の“あの”問題作『ミロクローゼ』にまで遡る。

 “笑い”や“ふざけ”の要素の少ない今作『唄う六人の女』を観てから、この『ミロクローゼ』を観た方は、そのあまりのギャップに驚くことだろう。こちらは、全編“笑い”と“ふざけ”に溢れている。ふざけてないシーンを探す方が難しく、そのクセの強さは、しばらく夢に出てきてうなされるほどだ。

 この『ミロクローゼ』において主演を務めているのが、山田孝之である。しかも3役だ。ほとんど“山田孝之独演会”である。

 “クセの強い男前が延々ふざけ続ける”映像が、10年経った今も頭から離れない。

 今作『唄う六人の女』における山田孝之には、ふざけ要素が一切ない。先述した通り徹頭徹尾“クズ”である。だが、これだけわかりやすく“善悪”のコントラストをしっかりと描いているのには、大きな理由がある。

 この物語の本当の主人公は、この二人ではないからだ。本当の主人公は、もっともっと大きな存在である。その本当の主人公から見た“善なるもの・救済者”が萱島であり、“悪なるもの・破壊者”が宇和島なのである。

 本当の主人公が何なのかはっきりわかった時、不穏な不条理劇が、美しく感動的な物語へと昇華する。

 石橋義正が描く、本当の主人公の美しさ。その美しさを守るため、救済者・萱島は、文字通り命を懸けて戦うこととなる。萱島が命を懸けて守ろうとしたものは、何なのか。それを確かめるために、映画館へと走ってほしい。

 本当の主人公の美しさを確認するには、大スクリーンがもっとも適しているからだ。

■公開情報
『唄う六人の女』
10月27日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
出演:竹野内豊、山田孝之、水川あさみ、アオイヤマダ、服部樹咲、萩原みのり、桃果、武田玲奈、大西信満、植木祥平、下京慶子、鈴木聖奈、津田寛治、白川和子、竹中直人
監督・脚本・編集:石橋義正
脚本:大谷洋介
音楽:加藤賢二、坂本秀一 
主題歌:NAQT VANE「NIGHTINGALE」(avex trax)
制作プロダクション:クープ/コンチネンタルサーカスピクチャーズ
制作協力:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ 
©2023「唄う六人の女」製作委員会

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