『呪術廻戦』大幅に補完された虎杖×脹相の激闘 差し込まれた間が暗示した“ためらい”
「弟は、最期に何か言い遺したか?」
渋谷駅構内に辿り着いた虎杖悠仁を待っていたのは脹相だった。この時点では虎杖は気づいていないようだが、脹相にとって虎杖は因縁の相手。というのも、八十八橋で虎杖と釘崎野薔薇と戦った末に敗れたのが脹相の弟である壊相と血塗だった。脹相は兄弟愛が強く、過去には「壊相は血塗の為に、血塗は俺の為に、俺は壊相の為に生きる」と発言するなど、情の厚い人物として描かれていた。これまでは戦闘に参加することはなかったが、弟の仇を取るために虎杖に勝負を挑む。『呪術廻戦』第37話では原作以上に虎杖と脹相の戦闘シーンが補完されていた。
虎杖を発見した脹相は血相を変えて赤血操術「百斂」(血液を加圧し限界まで圧縮する技)、「穿血」(百斂で圧縮した血液を一点から解放して打ち出す赤血操術最大火力の技)を放ち、虎杖の左腕に致命傷を負わせる。そこで脹相は弟について問いかけると、虎杖は弟たちが泣いていたことを明かす。これに脹相は激怒し、赤血操術を使った攻撃で虎杖を追い詰めていく。
距離を取ってしまっては赤血操術によって繰り出されるスピードの攻撃を回避できないと察知した虎杖は、地面から足を離して発射のタイミングを狙う。「穿血」は初速は速いが、一度回避すれば虎杖の能力であればいとも簡単に交わせる攻撃でもある。虎杖は自らが得意な接近戦に持ち込もうと距離を取るが、「超新星」(血液を全方位に解放する散弾技)で不意を突かれる。虎杖も不意のキックで応戦するものの、「赤鱗躍動」といった物理技で反撃を食らってしまう。
するとしばらく沈黙していたメカ丸が残した傀儡が復活。脹相の攻撃が赤血操術であることが分かると、虎杖をトイレへ逃げ込むように説得する。印象的だったのはメカ丸が赤血操術について解説するシーン。壁に隠れる虎杖の姿をカメラが捉えると、そのままシームレスに地下鉄の看板に描かれた赤血操術の技が映し出される。アニメならではの洒落た演出だ。
「弱虫なんだな、弟と同じで」というメカ丸の挑発に誘われて、トイレへと向かった脹相の目の前に広がっていたのは水浸しになった空間。すると後ろから虎杖が姿を現し不意打ちに成功する。なぜ、メカ丸はトイレへとおびき寄せたのか。赤血操術は術式効果を上げるために、常時、血液凝固反応を切っていた。そうすると、血液は水により一層溶けやすくなり、血液成分のバランスが崩れる。つまり、水と血液が混ざった状況では赤血操術が使えなくなるのだ。自らの土俵に持ち込んだ虎杖。しかし、脹相の冷静な一瞬の判断により、虎杖は肝臓を貫かれてしまう。本来であれば致命傷のはずだが、虎杖は立ち続けることを諦めなかった。それは「五条悟を助けるのは自分でなくともいい」と自らの役割を自覚したからだ。