“都市の映画”の側面も 世界中の社内恋愛カップルを凍りつかせる『Fair Play/フェアプレー』

 オスカー候補も狙えそうなクロエ・ドモントの脚本は、ディテールにこそ全てがある。深夜、エミリーは社長(不気味なカリスマ性を漂わせるエディ・マーサン)に呼び出されると、バーのカウンターでとっさに「マッカラン25年、ニートで」と注文する。ルークとエミリーの部屋を見渡せばウィスキーのボトルがいくつかあり、彼女は上司たちとの痛飲も事もなげだ(ちゃんと自力で家に帰れている)。片や行きつけのバーでルークと合流すれば、彼はなんの断りもなくエミリーに「ウォッカソーダ」を注文する。自分の欲するものを自分で選択できる女性に対して、ルークの行動はハナから間違っているのだ。

 男女の破局はいつかどこかで聞いた話と思えるかもしれない。だが『Fair Play/フェアプレー』には不吉なことに冒頭から鮮血のイメージがつきまとう。エミリーの生理、ルークの口先だけの血の誓約、そして……。悲鳴と喝采が飛び交うであろうラストシーンは、残念ながら多くの観客が劇場ではなくスマートフォンやTVで1人で味わうことになる。それでも「最近、面白い映画がない」と退屈そうな友人に本作を勧めれば、翌日は大いに議論が盛り上がることを約束しよう。

■配信情報
Netflix映画『Fair Play/フェアプレー』
Netflixにて独占配信中
Courtesy of Netflix © 2023 MRC II Distribution Company, L.P.

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