『ブギウギ』は“朝ドラええとこどり”に“アップデート”を加えたハイブリッドな一作
USKトップの橘センパイ。芸能の現場でヒロインを厳しく導いた存在といえば2020年度後期の朝ドラ『おちょやん』で若村麻由美が演じた山村千鳥が思い浮かぶ。『おちょやん』から3年経ち、年下の人間に業界の先輩として仕事のイロハを厳しく指導する登場人物の描き方もさらに難しくなってきた。が、橘のモチベーションが梅丸愛であることを複数回提示している脚本と、演じる翼和希自身がUSKのモデル、OSK日本歌劇団で活躍する男役スターであることからキャラクターの造形に説得力がある。デビューが決まった鈴子の同期・辰美が芸名を桜庭和希としたのは、難役を担った橘センパイ役・翼和希に対する製作陣のリスペクトかもしれない。
この数年、エンターテインメント業界全般において“アップデート”がひとつのキーワードとなった。従来の価値観から先に進め、今の時代にフィットした考え方のもと物語やキャラクターを構築しようとする動きだ。ただ朝ドラの場合、さかのぼった時代を舞台とするものが多いため、描く時代の価値観と今の考え方とを上手く結びつけないとハレーションが生まれてしまう。
そんな中『ブギウギ』は、従来の朝ドラの鉄板=“ええとこ”を踏襲しつつ、父権バリバリでない家族の在り方や社会から一歩外れた位置で生きる人々、厳しい上下関係の中、同じ夢を追う女性たちの結束など2023年の視聴者に向けてさまざまなアップデートが施されている。まさに鉄板×アップデートのハイブリッドな朝ドラなのである。
子役が活躍した2週が終わり、3週目からは鈴子役の趣里をはじめ、大人キャストに本格的にバトンが渡る。そこでまず描かれるのが当時、世の中的にも多大な影響を与えた「桃色争議」だ。芸能界で表に立つ俳優や楽団員たちが待遇改善を求めて行うストライキが『ブギウギ』でどう描写されるのか、2023年の今だからこそその行方をしっかり見届けたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK