朝ドラ『ブギウギ』は序盤から“信頼できる”セリフの数々が 他者への敬意にあふれた大人の作劇

「せやけど、辛い言うてんのはタイ子ちゃんやねんで。鈴子が大丈夫や言うても、タイ子ちゃんは大丈夫やないねん。誰もが言われると心底辛いことが一つや二つはあるもんや。それを気にせんでええって軽う言うんは、お母ちゃんは違うと思うねん。鈴子も悩んだらええ」

 ツヤの台詞に「このドラマは信頼できる」と思わされた。鈴子を、いわゆるただの「猪突猛進でおせっかいなヒロイン」では終わらないのだという、作り手の意思を感じる。「自分と他人は別の人間である」というきちんとした線引きがあり、他者への敬意がある。大人の作劇だ。生(なま)の人間の心の機微を瑞々しく描き、生きづらい人々に温かな視線を向ける脚本でおなじみの足立紳の筆が、初週から冴え渡っている。

 モデルである笠置シヅ子の史実を見るに、そして第1話冒頭のナレーションが「これは、歌手・福来スズ子の笑いと涙の物語です」と語っていることから、極めて波瀾万丈な人生が、鈴子を待ち受けていることだろう。しかし、この両親のもとで育った鈴子なら、どんな運命にも立ち向かっていくだろう。子どもの頃に愛された記憶が、踏ん張る力になる。シングルマザーとして、歌い、たくましく生き、人々を励まし元気づけていくであろう鈴子を通して、「人は助け合って、愛し愛され生きていくもの」ということを、この物語は描こうとしているのかもしれない。

 第2週からは、梅丸歌劇団に入団し、エンターテインメントの世界に足を踏み入れた鈴子の奮闘が描かれる。これから半年間、どんな「ズキズキワクワク」を見せてくれるのか、楽しみだ。 

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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