『沈黙の艦隊』が仕掛けたAmazonスタジオ製作&東宝配給という新しい試み

『沈黙の艦隊』が仕掛けた新しい試み

 10月第1週の動員ランキングは、映画『ミステリと言う勿れ』が週末3日間で動員30万5000人、興収3億9400万円をあげて、3週連続で1位をキープした。累計動員は205万5000人、累計興収は27億7600万円。公開3週目でも前週比76%という高い水準で推移していて、まだまだ数字は伸びていきそうだ。

 初登場2位は、1988年から1996年にかけて週刊『モーニング』で連載された、かわぐちかいじの大ヒットコミックを大沢たかおのプロデュース&主演、監督に『ハケンアニメ!』の吉野耕平を迎えて実写化した『沈黙の艦隊』。初日から3日間の動員は27万4000人、興収は3億7000万円と、僅差で1位の『ミステリと言う勿れ』に届かなかった。

 『沈黙の艦隊』で注目すべきは、配給は東宝が手がけているものの、日本の劇場映画では初となるAmazonスタジオの製作作品であるということだ。Amazonスタジオの設立は、まだ配信プラットフォームのPrime Videoのサービスが現在のようなフォーマットになる前の2010年。当初は主に他のスタジオと協力して作品の共同配給を手がけることで、自社のサービスにおける独占配信権を取得するというビジネスモデルだったが、やがて豊富な資金力をバックに作品の製作にも積極的に携わるようになっていった。

 近作でいうと、今年4月7日に日本公開(北米公開は4月5日)されたベン・アフレック監督『AIR/エア』は製作にAmazonスタジオがトップクレジットとして入っている作品。また、今年5月26日に日本公開(北米公開は3月3日)されたマイケル・B・ジョーダン監督『クリード 過去の逆襲』もMGMスタジオが製作としてクレジットされているものの、実はそのMGMスタジオは2021年5月から始まる交渉を経て、2022年3月には正式にAmazonスタジオに合併された。両作品とも、日本でも劇場公開から異例の短期間でPrime Videoの独占配信作品にラインナップされたが、そこにはそうした事情があったわけだ。

 現時点で『沈黙の艦隊』の配信に関するリリースはなく、海外同様に短期間でPrime Videoのサービスに入るかどうかはわからないが、配信されるプラットフォームは当然Prime Videoということになるだろう。Amazonに限らず、ディズニーは昨年から、そして今年に入ってからはNetflixまでもが、劇場公開から配信の間隔についての見直しを進めていて、「劇場での興行になるべく影響の少ない配信タイミング」を作品ごとに探っている状況だ。『沈黙の艦隊』はAmazonスタジオによる日本国内で製作された劇場公開作品という前例のないケースだけに、興行収入だけでなく、配信までの期間をはじめとする今後のウィンドウ展開がどうなっていくかについても注目していきたい。

■公開情報
『沈黙の艦隊』
全国公開中
出演:大沢たかお、玉木宏、上戸彩、ユースケ・サンタマリア、中村倫也、中村蒼、松岡広大、前原滉、水川あさみ、岡本多緒、手塚とおる、酒向芳、笹野高史、アレクス・ポーノヴィッチ、リック・アムスバリー、橋爪功、夏川結衣、江口洋介
原作:かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社)
プロデューサー:大沢たかお、松橋真三
監督:吉野耕平
脚本:髙井光
音楽:池頼広
主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック)/楽曲提供:B’z
製作:Amazon Studios
制作プロダクション:CREDEUS
協力:防衛省・海上自衛隊
配給:東宝
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公式サイト:silent-service.jp
公式X(旧Twitter):@silent_KANTAI

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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