『葬送のフリーレン』なぜ壮大な劇伴に? Evan Callが語る日本アニメのユニークさ
「日本の“メロディを大事にする”音楽の作り方に惹かれた」
ーーEvanさんの考える「日本のアニメ劇伴らしさ」とはなんだと思いますか?
Call:良い意味で“何でもありなところ”ですね。ジャンルも混ざってるし、時には唐突にバンドサウンドも入る。海外はどちらかと言うと、劇伴は作品を邪魔しないことがポイントになっている傾向があります。ハリウッド映画もそうです。1990年代、2000年代の始めの雰囲気はまだメロディアスな曲が多かったと思います。その点で言えば、日本のアニメ劇伴はユニークさがあると思います。
ーー確かに、作品によって音楽の色も全然違います。日本のアニメ音楽との出会いは、やはりアニメ作品にハマるところからでしたか?
Call:元々どちらかといえば、日本のゲームが大好きでした。『ゼルダ』や『スーパーマリオ』、『ファイナルファンタジー』……さまざまなゲームを楽しんでいました。それから少しずつアニメも観るようになりました。もちろんアメリカのコンテンツも観てはいましたが、音楽に対する理解が深まるにつれて、日本の“メロディを大事にする”音楽の作り方に惹かれたんです。
ーーEvanさんはアニメ『SAMURAI 7』がお好きだと聞きました。
Call:そうなんです! 子供向けじゃないアニメで一番初めに観たものです。 『SAMURAI 7』には機械のサムライが出てきますが、これはアメリカのアニメ作品ではなかなかない発想です(笑)。アメリカのアニメは“カートゥーン”と呼ばれるコメディがほとんどです。日本のアニメは、アニメだからといって作品のジャンルが限られることはないと思います。コメディ作品もあれば、シリアスな作品もある。そこが良いところだと思います。
ーー作品数も増えてる今、アニメ音楽の形も広がってますよね。過去に観たアニメ作品の中で印象に残っている劇伴はありますか。
Call:同じ業界にいる人々の音楽はあまり聴かないようにしています。自分が本当に観たい作品や、やりたいゲームの音楽は除いてですが……(笑)。あまり人の影響を受けたくないんです。今のトレンドや流行に合わせるよりも、自分がやりたいことをやりたい気持ちが強いです。なので、昔の作品ではありますが、一つ印象に残っているのは岩崎琢さんの『OVA:るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』の音楽です。アニメ音楽の世界で、初めて「これはすごい」と思った瞬間でした。昔、中古CD屋さんによく足を運んでいたのですが、なぜかそのサントラがアメリカの田舎の中古CD屋にあったんです。その場で買いしました。メロディの雰囲気、そして彼が作る弦楽器の音色が特に好みでしたね。
ーー当時のEvanさんはどんな音楽を作っていたのでしょうか?
Call:その頃、私はアコースティックギターを弾き始めたばかりで、音楽制作はまだまったくできないという状態でした。実際、作曲家としての道に進むことも、比較的遅いタイミングで始めたんです。13歳ぐらいの頃から、遊びの域でアメリカのブルーグラス音楽に触れるようになって。その後、アニメやゲーム音楽の魅力に気がついてからは安いキーボードを手に入れて、徐々に音楽制作を試みるようになりました。
ーーEvanさんの考える、アニメーションにおける劇伴作りの魅力とはなんですか?
Call:音楽を映像に合わせてみる瞬間が一番楽しいですね。音楽を作る過程も好きですが、音楽が映像と組み合わさって初めて完成形が見える瞬間は特別です。音楽だけでなく、セリフや効果音、絵と組み合わせて初めて物語が生まれる。この瞬間が一番ワクワクします。
■放送情報
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて、毎週金曜23:00〜放送
キャスト:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、東地宏樹、上田燿司
原作:山田鐘人、アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
OPテーマ:YOASOBI「勇者」
EDテーマ:milet「Anytime Anywhere」
©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
公式サイト:https://frieren-anime.jp
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Anime_Frieren