リン・ズーホンがコミカルな演技で新境地 笑い満載の『緑島金魂』に感じる台湾への深い愛

リン・ズーホン主演『緑島金魂』の魅力に迫る

 リクエストページを設け、視聴者からの声を配信作品選びに反映させている動画配信サービス・みるアジア。8月から配信がスタートした台湾ドラマ『緑島金魂』はまさに、日本語字幕で観たいというリクエストからラインナップに加わったホラーコメディだ。本作のリクエストが多かった最大の理由は、メインキャストの1人であるリン・ズーホン(林子閎)の存在。台湾BLドラマ『We Best Love』シリーズで日本のファンの心をがっちりつかんだ彼が、イケメンイメージ崩壊を物ともしないコミカルな演技で新境地を開いている。現在週1話ずつの配信ながら、サイト内ランキングで上位に入る人気をキープしている本作の魅力に迫ってみたい。

コテコテの笑いが満載、 異色のホラーコメディ

 『緑島金魂』は、2016年~2017年に台湾で放送されたドラマシリーズ『植劇場』(Qシリーズ)の第2弾『茁劇場』の中の1作。台湾の著名な監督たちが人材育成と映像制作を目的に企画したシリーズで、『緑島金魂』は台湾の自然や生態系研究などで著名な陳玉峰による小説『緑島金塊』をドラマ化した作品だ。台湾東部の南に位置する小さな島「緑島」に金が埋まっているという言い伝えをもとに、人生の再起をかけて金を掘り当てようと集まった“崖っぷち”の人々の奮闘と、彼らが遭遇する摩訶不思議な現象をコメディタッチで描く。

 楊志傑(ヤン・ジージエ)は、幼稚園の先生に片想い中のデリバリー配達員。立ち退きを迫られている彼女の幼稚園を救うには大金が要るが、お金も家族も学歴もない彼には何の手立てもない。かつて一世を風靡した歌手の蔡順義(ツァイ・シュンイー)は、人気低迷と即席麺ビジネスの失敗で多額の借金を背負い、ヤクザからの取り立てにおびえる日々を送っている。ある日、マネージャーから「宝の地図」を託され、借金返済のために緑島での金の採掘を決意する。

 火旺(フオワン)と秀美(シウメイ)は元夫婦。愛する息子をピアノ留学させたい2人は、知り合いの孫である志傑も誘って、順義にもちかけられた一攫千金のチャンスに乗る。意気揚々と緑島に降り立った4人の運命は……。

 吉本新喜劇を観て育った関西出身の筆者は、このドラマを観て懐かしさを覚えた。ひと言で言えば、それは“コテコテの関西のノリ”。本作の北村豊晴監督も関西出身で、落語家を目指したという過去があるからだろうか。ホラーコメディと銘打ってはいるが、コメディ色が強烈で、個性豊かなキャラクターが繰り広げるハチャメチャ感が大きな魅力になっている。

 とはいえ、ただのドタバタコメディでは終わらない。欲望にまみれたキャラクターたちの人間模様を面白おかしく描きながら、物語は意外な奥行きを見せ始め、「こんなはずじゃなかった……!」と涙を搾り取られる結末を迎える。作品自体は全6話とコンパクトだが、見せ方を心得たストーリー展開の巧みさにうなる。

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