『劇場版シティーハンター 天使の涙』は何度でも楽しめる! 愛され続けるシリーズの凄み
美女には滅法弱い街のスイーパー(始末屋)、冴羽獠が活躍する『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が、現在全国のスクリーンで公開中だ。
アンジーと名乗るアメリカ人女性が、行方不明の猫探しで獠を頼ってくるが、その裏にはナノマシンを応用した“ADM(アダム)”と呼ばれる薬品の試作品第1号を巡る陰謀が隠されていた。同じ原作者繋がりで『キャッツ・アイ』の怪盗三姉妹が映画冒頭から登場したり、作中で喫茶キャッツアイの修繕費が嵩んだといった会話があることから、『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』(2019年)から地続きの話であることが分かる(前作の映画で『キャッツ・アイ』の三姉妹が『シティー・ハンター』世界にやってきて、喫茶キャッツアイも店内が激しく破壊されている)。
本作のゲストヒロインは声優の沢城みゆきが声を担当。獠と対立する敵キャラクターに関智一、木村昴らを配しており、声の芝居にもプロ同士の緊張感が漂っていて見応えがある。
『週刊少年ジャンプ』(集英社)連載の漫画『シティーハンター』は、1980年代半ばに初めてアニメ化されたが、この時代は同じ少年ジャンプ作品のアニメ化が集中した。北条司原作の『キャッツ・アイ』(1983年)、ゆでたまご原作の『キン肉マン』(1983年)、武論尊、原哲夫原作の『北斗の拳』(1984年)、鳥山明原作の『ドラゴンボール』(1986年)、そして『シティーハンター』(1987年)だ。どの作品もTVシリーズ2作品以上が制作され、放送期間が1年~3年に及ぶ長期番組となっている。
このうち『キャッツ・アイ』は、映画『新宿プライベート・アイズ』に出演した後、Prime Video独占配信作『ルパン三世VSキャッツ・アイ』(2023年)でルパン一味と共演。『北斗の拳』と『キン肉マン』はすでに新作アニメ化が報じられており、『ドラゴンボール』は今なお不定期ながら新作映画が制作されている。1980年代中盤期にアニメ化されたジャンプ作品が、2023年現在まで時代をまたいで愛され続けているわけで、ジャンプアニメのポテンシャルたるや恐るべしである。
再アニメ化の発表があった『キン肉マン』と『北斗の拳』の不変の人気ぶりはもちろん凄いのだが、『シティーハンター』はさらに頭ひとつ抜きんでた印象がある。1991年放送の『シティーハンター’91』で足かけ4年にわたったTVシリーズが終わり、その後は単発のTVスペシャルが制作されていたが、それも1999年に終了。その後はTV、映画ともにアニメの動きは全くなかったものの、2019年の『新宿プライベート・アイズ』で20年ぶりに復活を果たす。これに呼応するかのようにフランスで制作された実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)が、原作の高い再現度で大きな話題となって公開。鈴木亮平が冴羽獠を演じる日本の実写版が2022年12月に製作発表されている(Netflixで2024年配信)。そして今回の劇場用アニメ『天使の涙(エンジェルダスト)』である。鈴木亮平主演の実写版はまだ続報がないため内容は未定だが、他の関連作に付いては80年代のTVシリーズレギュラーが、ずっと声の出演を続けているというのも凄すぎる。