中村倫也が明かす、役者を続ける理由 「“ご縁を大切に”と思うようになりました」
池井戸潤原作の異色のミステリーをドラマ化した『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)。本作で、都会の喧騒を離れ、ハヤブサ地区と呼ばれる田舎町に引っ越した主人公・三馬太郎を演じているのが中村倫也だ。
35歳を過ぎて「ご縁を大切に」と思うようになったと語る中村に、13年ぶりの共演となった川口春奈や、梶原善、橋本じゅん、生瀬勝久ら先輩俳優との共演について語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
“後輩”に戻れる『ハヤブサ消防団』の撮影現場
――今回は、過去に出演された『下町ロケット』(TBS系)の池井戸潤さん原作、さらに『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)のプロデューサーからのお声掛けということで、内容を聞く前にオファーを受けたそうですね。
中村倫也(以下、中村):35歳を過ぎて、「ご縁を大切に」とすごく思うようになりました。大前提として、売れる前に目を掛けてくれた人には恩返しがしたいですし、「また一緒にやりたいな」という思いが強くあって。それに、自分も年齢を重ねてきて、どれだけ仲がいい友達でも、みんな等しく、もう2度と会わないかもしれない。そう考えると、「もう1回やろう」と思える関係性や繋がりって、もしかして人生の中でかなり上位に来るくらい大切なものなんじゃないかなと。年齢とともに、そんなことを感じるようになりました。
――これまで撮影をしてきて、手応えを感じた瞬間はありましたか?
中村:第1話のワンカットで撮った消火シーンは、よくできたなって思います。今までの消防のドラマを考えても、自分たちだけで水を汲み上げて、水圧を調整して、ホースから水を出して、ということをやった役者たちはなかなか珍しいと思うので、やっている側としては胸を張れますよね。でも、本当に編集次第なので、もう何年も“手応え”とかそういう発想がないです。僕はドライというか冷静なので、現場で自分らが一生懸命やったものを、今度は客として楽しみに待っている。宣伝なんだからうまく言えよって話ですけど(笑)、自分たちで「手応えを感じてます!」というときほど空滑りしたりするものなので、まっさらな気持ちで観るために、一つ一つを積み上げています。
――太郎を演じる上で、ご自身から提案したことはありますか?
中村:“提案”がどこまでの範囲なのかわからないですけど、腐るほどあるといえばありますし、特にないといえば特にないというか。
――「こうしてみたらどうですか?」みたいな軽いもので大丈夫です。
中村:ロケ現場にヒルがいるんですよ。だから、「長ズボンを靴下にインしたい」と言いました。衣装部はカッコよく着てほしいから直そうとするけど、「いや、ヒルがいるんだ」って固辞しました(笑)。なので、観返す機会があれば、「あ、インしてる!」と思ってください。
――ある意味、リアルを追求しているわけですね。
中村:そう。だってヒルがいるんですもん。夏の山に入るのに、「普通しない?」と思って。スタッフはみんなやってるんですよ? その中で、役者だけ“役だから”ってやってないのはおかしいじゃないですか。
――たしかに。そうやって現場で気づいたことを提案して、反映させて。
中村:そうですね。ヒルのことばっかり提案しています(笑)。
――(笑)。先輩たちに囲まれて楽しく撮影されていると思いますが、後輩が多い現場も増えている中で、今回はかわいがられていた時代に戻ったような感覚がありますか?
中村:まさにそんな感じです。20代前半の頃は、本当に演劇界のおっちゃん、おばちゃんらにずっと付いて回って、いろいろと話をして、飯を食わせてもらって、という生活をしていたので、久しぶりにそこに入ったような……なんて言うんですかね、この感覚。今回も演劇の方がいっぱいいるので、なんだか懐かしい気持ちです。
――当時と同じ環境に置かれることで、あらためてご自身の変化を感じることもありますか?
中村:やっぱり「経験値を積んできたんだな」というのはありますね。そのときは若手で、全然足りていなかったり、理解できなかったりしたことが、少しわかるようになったというか。今ももちろん先輩ですけど、先輩たちも同じ目線だったり、主演として僕のことを見てくれるので、言葉にはできない感覚的な部分で変化を感じています。
――現場で、先輩たちとはどんなお話を?
中村:人は誰でもそうでしょうけど、自分の好きな話題がポッと出るとすごく喋るんです。特に(梶原)善さんが顕著で、「どこどこに美味しいお店があった」とか話していると、「僕ねぇ、それねぇ」と楽しそうに入ってきて、次にどのセリフから始めるのかを忘れちゃうっていう(笑)。でも、能力がある人って優しいので、今回は本当に優しい人ばかりです。(川口)春奈ちゃんも、「怖い人いない」って言っていました。やっぱりそっちの方がいいですよね。普通の会社でもそうだと思うけど、面倒くさい人がいると面倒くさいじゃないですか。歳を取るほど怒ってもらえなくなるから、自分も気をつけないといけないですよね。