『ダンジョン飯』『空挺ドラゴンズ』『異世界放浪メシ』 異世界飯テロアニメ人気の理由

 ある日突然に異世界へと召喚されてしまったものの、勇者に相応しいスキルを持っていなかったためお払い箱となってしまった独身サラリーマンの向田(ムコーダ)だったが、実は付与された「ネットスーパー」というスキルが、その名のとおりに現実世界のスーパーマーケットから、あらゆるものを取り寄せてしまえる能力だった。いっしょに付与された「アイテムボックス」のスキルと合わせることで、どんな場所へも膨大な食材を運んでは、現実世界の調味料を使って好みの料理を作ることができた。

 たとえばポトフ。ベーコンやキャベツやソーセージをカセットコンロで煮込み、ブイヨンで味付けしただけのものだが、移動中の野外では干し肉と固いパンをかじるだけだった異世界の冒険者たちには驚かれて歓迎された。そしてレッドボアの生姜焼き。移動中に倒したモンスターがブタに似ていたことから、取り寄せた市販品のタレで味付けをして出したところ、冒険者たちだけではなく匂いに釣られて現れた伝説の魔獣フェンリルをも唸らせ、無理やり主従契約を結ばされてしまった。

『とんでもスキルで異世界放浪メシ』お料理動画~レッドボアの生姜焼き~

 以後、行く先々でフェンリルが異世界の魔獣を捕ってきてはムコーダが現実世界の調味料や、異世界には存在しない米やパスタといった食材を使って料理を作り、旅を続けていく。ロックバードは巨大でもチキンのようなものだから、両面をコンガリと焼いて照り焼きソースをかけて食う。人間のように二足歩行をしていても、オークはブタということで薄く切って卵に絡めてピカタにする。素材の元の姿を気にしなければ、食べてみたいと思わせる料理ばかりだ。

 料理物なら『ミスター味っ子』や『中華一番!』『食戟のソーマ』といったアニメが断続的に登場して、食への興味をかきたててくれていたが、舞台を異世界に替えた時、そこには未知なる食材への興味や、屋外で食べるキャンプ料理への関心といった“スパイス”がかかって、想像できる美味しさを倍加させるのかもしれない。料理勝負に留まらず、冒険ストーリーの中に料理を織り交ぜられる点も、こうした“異世界メシ”を人気ジャンルにしている理由になっていそうだ。

 そして何より、どの“異世界メシ”も実に美味しそうに見えることも。この背景には、TVアニメを手掛けたスタジオの高い作画力があるだろう。『空挺ドラゴンズ』を手掛けたのはポリゴン・ピクチュアズ。3DCGのアニメーションを得意とするスタジオだが、『亜人』や『BLAME!』といったセル画調のアニメも多く手掛け、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』でアイドルものにも乗り出す。その技術で原作の料理をしっかりと再現してのけた。

 『とんでもスキルで異世界放浪メシ』の制作会社はMAPPAだ。『呪術廻戦』や『チェンソーマン』、そして9月15日公開の岡田麿里監督による映画『アリスとテレスのまぼろし工場』を手掛けてハイエンドな映像を見せてくれているスタジオだけに、料理も素材からキャベツの千切りの仕方からしっかりと描かれていた。設定から描写からすべてに手を抜かずに挑む両スタジオの意識の高さが、登場する異世界メシをより美味く見せたと言える。

 この流れで言うなら、『ダンジョン飯』も『プロメア』や『SSSS.GRIDMAN』のTRIGGERが制作で、クオリティの高さは相当に期待できそうだが、それだけにティザーPVに映る食材も、魔物ならではのグロテスクさが余計に際立って見えてしまっている。これが料理となった時にどれだけ美味しそうに見えるのか。食べたいと思わせるものになっているのか。気になるところだ。

関連記事