宝塚歌劇団と映画は相性抜群!? インド映画『RRR』舞台化への注目ポイント

宝塚歌劇団と映画の相性の良さを考察

 宝塚歌劇星組公演『RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~(アールアールアール バイ タカラヅカ ~ルートビーム~)』が、2024年1月1日から2月4日まで兵庫県・宝塚大劇場にて、2月23日から4月6日まで東京都・東京宝塚劇場にて上演される。激しいアクションが繰り広げられるインド映画『RRR』(2022年)の宝塚における舞台化に意外性を感じる人もいるのではないだろうか。しかし歌やダンスが人の心を動かす場面がいくつも織り込まれている本作は、音楽劇を得意とする宝塚と相性がよいことは確かだろう。

※以下、『RRR』のネタバレを含む

 映画『RRR』には歌とダンスが人の心を動かし、人びとの選択や状況を大きく変えるシーンがいくつも織り込まれているが、宝塚においてもほぼ全てのステージに歌とダンスが織り込まれている。宝塚のステージでは宝塚×『RRR』ならではのシナジー効果が生まれると期待できよう。

アーディラバート地方の森で歌うマッリのシーン×宝塚への期待

 『RRR』の冒頭では、キャサリン・バクストン総督夫人(アリソン・ドゥーディ)はゴーンド族のマッリ(トゥインクル・シャルマ)の歌に魅了され、この少女の買い取りを独断で決める。当時の時代思潮も加味しなければならないとはいえ、キャサリンの行為が冷酷であるのは言うまでもない。とはいえ、彼女にとって自身が見下げた民族の少女の歌に“歌い手を連れ去りたくなるほど”心惹かれるとは皮肉なことでもあるだろう。

 宝塚のステージでアーディラバート地方の森でうたうマッリのシーンが再現されれば、幕が開けてすぐにマッリを演じるジェンヌが劇場に美しい歌声を響かせるだろう。宝塚において娘役の独唱はみどころの1つであり、多くの観客が歌によってその人物の心情を感じ取る。また細かいことは抜きにしても、ジェンヌの美声や歌う姿を楽しみにして劇場に足を運ぶファンは多い。キャサリンがマッリの歌に心奪われたように、観客はマッリを演じるジェンヌの歌声に心を揺さぶられるはずだ。

ラーマとビームのダンス対決×宝塚への期待

 『RRR』の見どころのひとつでもあるのが、中盤の迫力のダンスシーン。ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア)とジェニー(オリヴィア・モリス)は社交クラブのパーティでバロックダンスをぎこちなくも楽しく踊る。ところが、ジェニーに恋心を抱く白人男性からビームに対する嫌がらせによってダンスは中断。この男はビームに「褐色の虫けらども」「芸術とその機徴が理解できるのか?」などと差別的な発言をし、周囲の白人たちは声を出して笑う。この窮した状況の中、ラーマ(ラーム・チャラン)が奏でたドラムの音をきっかけに、ビームとラーマは「ナートゥ・ナートゥ」を踊り、最終的にパーティの参加者を巻き込む。

 「ナートゥ・ナートゥ」の場面と宝塚のステージとの相性のよさは言うまでもない。『RRR』にはドレスを身にまとった大勢の女性たちがビームとラーマの後ろで激しく踊るシーンがあるが、大人数が華やかな衣装を身にまとって踊るシーンは宝塚の得意分野だ。宝塚のステージでダンス対決のシーンが再現されれば、観客は楽しく、パワフルに踊る大勢のジェンヌを目の前にすることになるだろう。映像ではなく、生の舞台でしか感じられないパワーに魅了されるに違いない。

祖国解放を銃で目指すラーマの心変わりのシーン×宝塚への期待

 物語の終盤、ラーマは鞭打ちの刑に処されたビームが自身の振るう鞭に屈せず、それどころか感情を歌にし、民衆を奮い立たせたことに感銘を受ける。ラーマはこの出来事を思い出して警察官の仲間に次のように述べているーー「銃のない革命を知った。奴の歌は民衆を動かした」「ビームの感情は人びとを武器に変えた。同じ感情を届ける」。祖国を解放するためには銃を使うしかないと考えていたラーマであるが、ビームの信念を貫く姿によって人びとの感情を動かすこともまた勝利への鍵となることを知るのである。

 宝塚は鞭打ち台の上に立つビームのシーンを迫力があり、かつ緊迫としたステージに仕上げることができるだろう。ジェンヌの演技は他の舞台役者と比べると大ぶりであるが、こうした演技の特徴がビームの勇敢さや揺るがない信念、心の強さなどを観客により伝わりやすくすると考えられる。また、ビームの歌に奮い立った民衆たちが英国に反旗を翻すシーンは大勢のジェンヌを舞台上に置ける宝塚ならではの迫力が出るに違いない。観客はビームや民衆の熱いパッションをジェンヌによる演技から感じ取れると期待できる。

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