『呪術廻戦』「懐玉・玉折」を経ての『劇場版 呪術廻戦0』 夏油一派への眼差しの変化

『劇場版 呪術廻戦 0』夏油一派への眼差し

 キャラクターのバラエティに富んだ夏油一派だが、皆が夏油の思想――つまり、非術師を守るために術師の屍が積み重なる世界を拒絶することに共感していると考えると、明かされてはいないがそれぞれに辛い過去があったのかもしれない。一見、“悪者”の手下のように見えるが、彼らが革命を起こそうとする訳も切実なものなのだとしたら。一派の見え方も少し変わってくるのではないだろうか。そして興味深いことに、彼らはそれぞれ夏油についていく理由が少しずつ違うのだ。迫害から救われ、夏油本人を支持する美々子と菜々子、そして夏油の思想……「非術師が淘汰された世界」を望むことに賛同した菅田真奈美や祢木利久。そして夏油を“王”にすることを望んだラルゥとミゲル。結局のところ彼らの忠誠が夏油に誓われていることに変わりないため、お互いを“家族”と認識して結託していた。

 彼らは「百鬼夜行」のとき、夏油の身が危険になった場合すぐに逃げるように言われていた。“家族”の安否を第一にしたことも、彼の優しさの表れになっている。「懐玉」で夏油は、幼いころに両親を失った天内理子の付き人・黒井美里に「じゃあ、あなたが家族だ」と何の躊躇いもなく伝えていた。あの時からすでに、彼の“家族”の概念が決して血縁関係のものに限らないことがわかる。実際、離反した直後に実の両親を“非術師であることを理由に”殺めている。その時から美々子と菜々子や、彼の思想に賛同してくれる仲間が“家族”だった。

 そんな彼らは劇場版で描かれた夏油の死後、どこに行ってしまったのか。ミゲルは五条に見つかった後、その強さを見込まれて乙骨憂太の指導を任せられた。敵だったはずのミゲルがある意味五条と協力関係を結んだのも、彼が一派だった理由「夏油を王にすること」が叶わなくなってしまったからではないだろうか(五条に脅された、という理由も十分考えられる)。劇場版のエンドクレジットで描かれたのは、そんな乙骨とミゲルに五条が再び会いに行った様子だ。これがアニメ第1期の時に五条が海外出張をしていた理由だったのだ。では、ミゲル以外の一派はどうしてしまったのか。意外と彼らの再会の時も、そう遠くないのかもしれない。

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