『ソウルに帰る』映画初出演パク・ジミンの圧倒的存在感 ルーツに揺らぐ20代のリアルさ
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、韓国旅行をしたばかりでソウルに戻りたい間瀬が『ソウルに帰る』をプッシュします。
『ソウルに帰る』
海外に旅行をした時、現地に到着してすぐは右も左もわからず言葉も理解できず、その国に全く受け入れられていないように感じることがある。でもその土地で過ごすうちに体も心もだんだんと馴染んできて居心地がよくなり、帰る頃には親近感すら感じている。こうした感覚は1度でも海外旅行をした人なら誰もが体験したことがあるだろう。
本作は、韓国で生まれてすぐフランスに養子に出された主人公のフレディが、25歳で韓国に戻り、実の両親を探していく物語。監督を務めたのは、カンボジア系フランス人のダヴィ・シュー。カンボジアの首都プノンペンが舞台の『ダイアモンド・アイランド』でカンヌ映画祭批評家週間のSACD賞を受賞し、本作が長編2作目となる。
“多様性を尊重しよう”という価値観が定着しつつある世の中にあっても、おそらく多くの“日本人”は日本に生まれ、日本で育った“純日本人”であるため、本作が描く「ルーツの探求」という主題とその葛藤からはどうしても遠い存在だ。頭で理解していても、当事者でない限りここで描かれていることを自分ごととして捉えるのはなかなか難しいのが実情かもしれない。しかし、本作はそんな「マジョリティであるわたしたち」でも大いに楽しめる映画だ。
まずはなんといっても主人公・フレディを演じたパク・ジミンの演技が素晴らしいのだ。筆者にもフレディと同様のアイデンティティを持つ友人がいるのだが、嫌がる時の拒否の仕草や、特に異文化をまずは受け入れてみようとニヤリとする表情なんて、息を呑むほどリアルだった。それがなんと本作が映画初出演だという。監督のディレクションも少なからずあるとは思うが、これには驚いた。