『ホリミヤ -piece-』の恋模様に胸が高鳴る夏 各話ごとに変化する演出の面白さ

 『ホリミヤ -piece-』が7月から放送中だ。キャラクターたちの恋愛模様にドキドキする視聴者も多いのではないだろうか。Netflixでは日本のTV番組ランキングのTOP10にランクインすることも多い。今回は今作の映像表現の特徴と、各話の方向性が違う演出の妙について考えていきたい。

「ホリミヤ -piece-」本PV

 『ホリミヤ -piece-』はHEROと作画担当の萩原ダイスケの漫画『ホリミヤ』を原作としたアニメ作品だ。2021年には実写でTVドラマ化もされているほか、TVアニメでは第1期が2021年の1月に放送されており、今作は第2期にあたる。

 物語は片桐高校に通う少し勝ち気だけれど普通の女子高生である堀京子と、クラスでは陰気な雰囲気を漂わせながらも体にタトゥーを入れるなどギャップのある青年・宮村伊澄を中心とした、等身大の高校生の恋愛模様を描いたラブコメディとなっている。

 第1期では主に2人を中心とした恋愛模様と卒業までの学校生活が展開された。今作では時系列をシャッフルし、修学旅行や体育祭などの原作では描かれているものの前作では放送されなかったイベントを中心に描写されている。キャラクターたちの和気あいあいとしたやりとりに、第1期を観ていなくても日常的なラブコメとして楽しめる構成となっている。

 引き続き監督を務めるのは石浜真史だ。石浜は『新世界より』も監督しており、ベテランらしい高い映像センスが光る。特にOPやEDの絵コンテ・演出を担当した際は職人技として高い評価を得ている。今作でもOP映像にスタッフの名前を組み込んだり、キャラクターたちの姿を淡い色使いと眩しい光で彩り、夏らしい爽やかさを感じさせる演出を施している。今期のTVアニメの中でも高い完成度に唸る。

「ホリミヤ -piece-」Omoinotake「幸せ」オープニング映像

 『ホリミヤ -piece-』を観ていて気がつくのは、デフォルメされたキャラクター表現の巧みさだ。近年は派手なアニメ表現が増えており、動き回る作画が神回と称される傾向にある。もちろん、そういった表現も魅力的ではあるものの、今作の場合はその方向性とは異なった表現を模索している。時には漫画的な記号を用いることで、デフォルメされたキャラクターの可愛らしさを表現しているのだ。

 その魅力が生きた第5話を例に挙げると、冒頭から井浦秀とその妹である井浦基子の家での会話劇から話が始まる。その際に背景を部屋の中ではなく水玉模様にするなどの漫画的な表現がなされているほか、キャラクターの目にグルグルと渦を描くなどのデフォルメが施されている。時には頭身すらもいじることによって、中学生である基子の幼さとともにコロコロと変わる表情の変化が楽しめ、一種のミニキャラのようなかわいらしさを発揮した表現も見受けられる。

 もちろん、これらの漫画的なアニメ表現というのは、今作から始まったものではなく日本のTVアニメでは珍しくないものだ。しかし、近年は先に挙げたようにリアルに近い頭身で派手に崩すことなく、動きや所作を作画して映像化する作品が注目を浴びている。ギャグシーンではミニキャラのようにデフォルメ化する作品でも、シリアスなシーンでは一切崩さないパターンも見受けられる。それもアニメの魅力ではあるのだが、作画枚数の増加など制作に負担がかかるのも事実としてある。今作は、毎週放送するTVアニメにおいて、このようなデフォルメ表現を交えることで、作画枚数や難易度をある程度コントロールすることに加えて、漫画・アニメの持つ魅力は多岐にわたることを教えてくれる。

 また、石浜監督はインタビューにて「演出的なルールは特に作っていません。原作の良さを理解した手練れのスタッフばかりで、みなさん意味を理解した上で『ホリミヤ』らしい描き方を探ってくださっています。なので、ルールや表現NGなども決めずに作りました。何にもなくてすみません(笑)」と語っている。この言葉のように、今作は各話の絵コンテ・演出担当者の裁量が大きいのだろう、各話で魅力が変わるのも面白い。(※)

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