『ばらかもん』五島での生活は清舟の“お手本”だ 「チャンスは下に落ちてる」という教訓
東京では新進気鋭の書道家としてもてはやされてきた若手書道家の半田清舟(杉野遥亮)が、五島列島では“不審者”扱いされ、遠慮のない島民たちに揉まれに揉まれている。
雨漏りに自然災害、お風呂の故障、さらに村の行事と様々な洗礼を真正面から受け、巻き込まれていく清舟役を演じる杉野の姿がなんだか微笑ましく頼もしくもある『ばらかもん』(フジテレビ系)第2話。第1話ラストで書きながら“楽しい”という思いが久々に湧き出てきた作品を書道展に応募してみるも準賞に終わり、しかも大賞に選ばれたのが18歳の新人・神崎康介(荒木飛羽)の作品だったと知り、ひどく落ち込む。
「先生ってプライド高いからさ、私たちが正論言っちゃうと落ちちゃうよ」と中学2年生にも気を遣わせ、小学生の琴石なる(宮崎莉里沙)にも励まされる始末だが、そもそもここまで素直に清舟が“悔しい”という思いや喜怒哀楽を外に出せること自体、東京にいた頃の彼には考えられなかったことではないだろうか。常に友人らからも影で親の七光りだと噂される中、自身の本音を安心して漏らすことができる場所など彼にはなかっただろう。
すぐに結果を求めてしまう清舟は看護師の育江(田中みな実)にも「一番にならなきゃいけないから、他のことに気回してる暇がないんです」「俺から書道とったら何も残らないから」と打ち明け、余裕も遊び心も皆無で追い込まれているようだ。
図らずもそんな清舟にとって良い気分転換になり、モヤモヤを晴らしてくれたのが村の恒例行事の“餅拾い”だった。ここでも全く餅を掴めない自分のことが情けなく嘲笑する清舟に、“餅拾い”のプロ・ヤスば(鷲尾真知子)はその秘訣をこっそり教えてくれる。「チャンスは意外にも下に落ちちょっけん」とはヤスばの言葉だが、餅は上から降ってくるものだと上ばかり見ていてはいけない、地面に落ちたものを拾うのも手だと全く別の視点を授けてくれる。「自分よりも餅拾いの上手い人がいてどうしても掴めない時にはどうすればいいか?」という清舟からのすがるような問いかけには、「お先にどうぞー、諦めなくてもいい、譲ってもっと大きな餅を狙え」と人生の教訓を示す。
そもそも書道界の重鎮・八神龍之介(田中泯)からも「賞をとるために書いたような字」だと言われていた清舟は、常にライバルや評価者のことが念頭にあり、自身が戦うべきフィールドが本当のところわかっていないのかもしれない。