『王様ランキング』はなぜ愛される作品に? 岡田麻衣子プロデューサーが第2期に込めた想い
TVアニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』が、フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送されている。生まれつき耳が聞こえず言葉も話せず、まともに剣すら振れぬほど非力だった主人公・ボッジが、誰よりも優しい心と稀有な才能を持ち、自分自身の人生を、そして周囲の人間の心を大きく変えた前シリーズ。その姿に多くの視聴者が涙し、心を動かされた。現在放送されている『勇気の宝箱』では、登場人物たちのこれまで語られなかったエピソードが描かれ、また新たな角度で『王様ランキング』を楽しむことができる物語となっている。アニメーションプロデューサーの岡田麻衣子氏は本作にどんな思いを込めていたのか。
各キャラクターの感情に寄り添うことを一番に
――『王様ランキング』前シリーズは普段アニメを観ない方々にも届いている印象がありました。改めて人気原作コミックのアニメ化にあたっての手応えからお話いただけますか。
岡田麻衣子(以下、岡田):前シリーズ第1話はスタッフの皆さんと観たのですが、Twitterでトレンド入りしたときはとても嬉しかったのを覚えています。その後、第2話、第3話と放送を重ねる中で海外でも評価されていると聞いたのですが、なかなか実感が得られずでして(笑)。ただ、友人だったり、友人の家族だったり、普段アニメをあまり観ない方からも「『王様ランキング』面白い!」という声が届くようになって、これまでにない層の方にも観ていただけているのかなと感じました。
――『王様ランキング』は各話ごとに、「家族」や「友情」といったテーマがはっきりしているところが見どころのひとつとなっていました。そのあたりはプロデューサーとして意識されていたのでしょうか?
岡田:まず前提として原作が素晴らしい作品であるので、その魅力をいかにそこなうことなく伝えられるかを考えていました。漫画をアニメ化する場合、各話をそのまま区切りとして置き換えてしまうと、感情面での区切りが悪くなってしまう部分があります。主人公ボッジが何をしたいのか、ボッジにとってカゲの存在はどれほどの励みになっているのか、第1話、第2話と明確に提示できるように意識した部分はありました。それが自然と「友人」「家族」がテーマとなったのかもしれませんね。
――『勇気の宝箱』も含めて、原作にはないアニメオリジナルの描写によって、よりキャラクターへの感情移入ができるようになった印象があります。
岡田:原作者の十日草輔先生に都度内容の確認は行っていましたが、大部分を私たちに委ねていただきました。私たちがアニメにするならこんな形がベストだと思いますと提案をする形だったのですが、大きな修正があるわけではなく、託してくださって。先生の原作は決してセリフが多いわけではなく、コマとコマの間に各キャラクターの感情が込められていると感じていて。その行間を想像してすくい取りながら、アニメだから表現できるものは何かをスタッフたちと考えていきました。シリーズ構成・脚本担当の岸本(卓)さんの構成が非常に巧みで、1話ごとの見せ場を作ってくれましたし、八田(洋介)監督のあえてボッジの表情をみせない演出なども素晴らしかった。本作を観て、「泣いた」と言ってくださる方が非常に多かったのですが、「泣かせよう」と思ってしまうことほど失敗しやすいものはありません。スタッフの皆さんが各キャラクターの感情に寄り添うことを一番に突き詰めた結果が、視聴者の方の感情を揺さぶることに繋がったのだと思います。原作の魅力はもちろんですが、各スタッフたちの素晴らしい仕事が重なった結果だと思っております。
――アニメ版の『王様ランキング』で驚いたのが、可愛らしい絵柄の魅力はそのままに、アクションの面でも素晴らしい演出がされていたところでした。
岡田:これまで私はWIT STUDIOで『屍者の帝国』や『甲鉄城のカバネリ』に携わってきましたが、本作のお話をいただいたとき、それらの作品で培ってきたアクション部分もうまくマッチングできるのではないかと感じました。八田監督は、テレビシリーズだけではなく映画も手がけてきた経験があり、『王様ランキング』では画面構成を映画のようにしているカットがあるんです。ボッジの視線(低い位置でのカメラアングル)にすることによって、テレビではなかなか表現できないようなリアルな世界観を構築しています。アクションに関しても培ってきた技術が集結したものになり、喜んでいただけたことを非常に嬉しく感じています。
――前シリーズの終盤の戦闘シーンなどは、漫画で読んだときの以上の緊張感と迫力がありました。
岡田:ボッジVSボッジが倒せないオウケンの戦い、オウケンVSボッス王国の最強兵四天王の戦い、そしてボッジVSボッスの強さとは何か示す親子対決ですからね。それぞれ見たかったものでもあり、皆さん自ずと力が入ってしまいましたね。