『どうする家康』板垣李光人のいたずらっぽい笑顔に釘付け “心”に訴えた毎熊克哉の名演も

『どうする家康』対照的だった弥四郎と虎松

 『どうする家康』(NHK総合)第20回「岡崎クーデター」。信玄(阿部寛)亡きあとも武田軍の強さは変わらない。武田勝頼(眞栄田郷敦)に徳川領へと攻め込まれ、信康(細田佳央太)は数正(松重豊)らと応戦するが、苦戦を強いられる。病に倒れ、浜松から動けない家康(松本潤)は忠勝(山田裕貴)らを援軍として送るのだが、家臣・大岡弥四郎(毎熊克哉)が岡崎でクーデターを引き起こす。

 弥四郎らが引き起こしたクーデターは、八蔵(米本学仁)が瀬名(有村架純)らに密告したことで失敗に終わり、弥四郎らは捕えられる。弥四郎の台詞と、毎熊の演技から感じられる家臣たちの苦しみと決意には心揺さぶられた。

 「浜松の殿の才と、武田勝頼の才を比べればおのずと……」と信康の感情を逆撫でするような弥四郎の物言いに、信康が「我が父までも愚弄するか!」激昂すると、弥四郎も怒りをあらわにした。「ずっと戦をしておる!」と信康らを睨みつける毎熊の目は印象的だ。

 「織田信長に尻尾を振って、我らに戦って死んでこいとず〜っと言い続けておる! 何のご恩があろうか!」という弥四郎の言葉は、信康や忠義を尽くしてきた家康の家臣たちから見れば、無礼に響く。けれど「ご恩だの忠義だのは我らを死にに行かせるためのまやかしの言葉じゃ!」という言葉と失意に満ちた弥四郎の眼差し、「皆、もうこりごりなんじゃ。終わりにしたいんじゃ」という弱々しい言葉の響きから、戦の最前線で戦い続けてきた家臣たちの絶望が感じられた。

 終わりの見えない戦いの中で、弥四郎ら家臣たちが望んでいるのは天下統一でも正義でもなく、飯を食べ、酒を飲み、好きなことをして過ごす日々だ。毎熊の佇まいには、そんな日々を取り戻すべく命がけでクーデターに臨んだ覚悟があった。弥四郎は家康らの立場から見れば裏切り者だ。しかし毎熊の演技によって、弥四郎の立ち位置が単純な「悪」ではなくなり、何とも切なかった。クーデターに加わった家臣たちの本当の心を力強く訴えかけた弥四郎は、最後まで信康を鋭く睨み続けていた。

 優秀な家臣だった弥四郎が家康を裏切ることを決意した一方で、かつて家康を憎んでいた井伊虎松(直政/板垣李光人)は家康に仕えることを決めた。

 家康は「聞かせてくれんか? わしを憎んでいたお前が、なぜわしに仕官することを願い出たのか」と問いかける。武田勢に押され続け、遠江の民からはバカにされている自分になぜ仕えることにしたのかと問う家康に、虎松は凛とした顔つきを崩すことなく「だからこそでございます」と答える。

「私は幼い頃より民の悲しむ姿、苦しむ姿ばかりを見てきました。しかし殿の話をする時は皆、愉快そうに大笑いします」
「民を恐れさせる殿様より、民を笑顔にさせる殿様の方がずっといい。きっとみんな幸せに違いない」

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