『らんまん』要潤演じる田邊は“悪役”か? 週タイトル「シロツメクサ」が意味するもの 

『らんまん』要潤演じる田邊は“悪役”か?

 植物図鑑を作るという生涯を懸けた仕事を見つけた万太郎(神木隆之介)。『らんまん』(NHK総合)第40話では、その勢いのまま植物学教室の波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)らと植物学の雑誌を作る決意を固める。先輩として少し先を歩く丈之助(山脇辰哉)の勧めもあるが、万太郎自身も出版物の成り立ちに興味があり、何より雑誌を制作するということは必ず図鑑へと続いていると万太郎には確信めいた思いがあったのだ。

 キノコの研究がしたい藤丸に、朝顔の品種の掛け合わせを調べたい波多野。3人(プラス1人)は牛鍋屋で意気投合するものの、その道の途中には田邊教授(要潤)を口説くという難関が立ちはだかっている。

 その頃、田邊は管弦楽協会理事の名須川(町田水城)、政府高官の佐伯(石川禅)、元薩摩藩士の実業家・高藤(伊礼彼方)とクララ・ローレンス(アナンダ・ジェイコブズ)のピアノ演奏を聴きながら、優雅に紅茶を嗜んでいた。彼らは鹿鳴館の計画に関わっている面々で、舞踏会に通ずる西洋音楽を楽しんでいたといったところだろうか。だがそれは名須川が触れているように、文明国を装ったポーズに過ぎず、庶民にはまだまだ文明開化の音はしてはいなかった。その好例が万太郎が住んでいる「クサ長屋」こと十徳長屋である。

 コーネル大学で学んだきたことを自負する田邊は、先鋭的な感覚と考えの持ち主だ。「民権踊り」や「よしや節」といった当時のいわゆる労働歌を“古い音楽”であり“下品な歌”と否定し、当時としてはまだ恥ずかしい行為という認識が根強くあった男性と女性が手を取って踊るということを舞踏会を通して推奨しようとする。田邊の考えに賛同しながらも、どこか不服そうな態度を示すのが、薩摩弁が強烈な高藤。拡大解釈をすれば、果たして舞踏会を開催してなんの意味があるのかとも言いたげな物言いだ。

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